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日経社説 あまりにも激しい経済環境変化の1年(12/30)
 主要国首脳が洞爺湖畔に集まってから、まだ半年もたっていない。チベット問題が影を落とした北京オリンピックの閉幕から4カ月あまり。麻生太郎首相の就任から3カ月強。オバマ候補が黒人として初めて米大統領選に勝利してから2カ月足らずだ。これらの出来事がずいぶん前に思えるほど、あまりにも急激な経済環境の変化に世界が揺れ、日本も揺れ続けた1年だった。
 米国を震源とする金融危機は世界のすべての市場に甚大な影響を及ぼし、急速な景気冷え込みは雇用問題の深刻化を伴いながら年を越す。
空前の幅で相場が変動
 年初に1バレル100ドルを突破した原油価格は7月に150ドル近い最高値を付け、今は40ドル前後だ。空前の幅で高騰し急落した原油相場は、経済激変の年の象徴ともいえる。
 昨年夏に米国のサブプライムローン問題が噴き出すまで、世界の経済情勢は「資源高騰下の同時好況」と呼ばれていた。その後、今年夏までは「景気減速とインフレの同時進行」が焦点だった。秋以降は日ごとに世界不況の様相が深まり、デフレ色も強まっている。短期間に経済環境がこれほど大きく変わり続けたことが、かつてあっただろうか。
 9月に米投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻した衝撃は、とりわけ大きかった。実体経済に比べ膨張しすぎていたマネーの経済が猛烈な勢いでしぼみ始め、株式からも商品相場からも新興市場国からも、投資資金が一気に引き揚げて、主要国の国債やキャッシュに逃避した。米欧などで短期資金市場や社債の発行市場が一時、機能マヒ状態に陥った。
 各国政府、中央銀行は国内金融機関への公的資金の注入を急ぎ、利下げや市場への緊急の資金供給など、対応に追われた。米連邦準備理事会(FRB)が12月に政策金利の誘導目標を実質ゼロまで引き下げ、量的緩和政策に踏み込んだことは、信用収縮の深刻さを端的に示す。
 ローンやクレジットカード利用など家計が負債に大きく依存する米国では、住宅価格や株価の下落の影響に加えて信用収縮の広がりが消費を一気に冷え込ませた。世界最大の市場である米国の需要減退は世界中の企業に直接、間接の影響を及ぼす。対米輸出依存度の高い国々の景気も減速し、米景気が後退しても新興国の成長が世界景気を支えるという「デカップリング論」は色あせた。
 需要の劇的な落ち込みが特に目立つのは自動車だ。11月の新車販売台数は前年同月と比べて米国が37%、欧州が26%、日本が27%も減り、中国、ロシア、ブラジル、インドなどでも軒並み減少した。
 米国では資金繰りに苦しむゼネラル・モーターズ(GM)などビッグ3救済が政治の焦点になった。日本でも前年度に2兆円を超える連結営業利益を計上したばかりのトヨタ自動車が今年度は赤字に転落する見通しになり、衝撃が走った。関連産業のすそ野が広い自動車メーカーの苦境は、来年にかけて景気と雇用により大きな影響を広げていく。
 日本では、年の瀬になって自動車メーカーなどを中心に非正規労働者の雇用を減らす動きが相次いだ。景気と雇用情勢の悪化が急速に進んでいるのに、政治の対応は後手に回った。福田康夫前首相の突然の退陣の後を継いだ麻生首相の支持率が短期間で急速に低下した最大の理由も、「政局より政策」と言いながら今年度第2次補正予算の提出を来年に先送りしたことだった。
枠組み見直しの契機に
 麻生首相は年明け後の通常国会に提出する2次補正予算案と来年度予算案を「生活防衛のための大胆な実行予算」と呼び、世界で最初に不況から脱出することを目指すという。主要国が相次いで財政出動を拡大する中で日本の財政措置の規模も大きい。だが、定額給付金など効果が疑問視される政策もあるし、衆参ねじれ国会で審議が長引けば、政策対応はさらに遅れる。衆院選挙がいつごろになるかも含め、政治の展望は不透明なまま新年を迎える。
 米国ではオバマ次期大統領が経済政策担当者をいち早く任命、1月の就任後2年間に300万人の雇用を創出する目標を掲げた。世論調査オバマ氏への支持率は8割を超える。期待値の高さは最大の課題である経済政策の難しさの裏返しでもある。
 金融危機に対応するため11月にワシントンで開かれた金融サミットは主要7カ国(G7)ではなく、中国、インド、ブラジル、サウジアラビアなども含む20カ国(G20)の枠組みだった。潤沢な資金を抱え、経済成長率も高い新興国抜きでは世界的な危機への対応が難しくなった国際経済力学の変化を示す。
 今回の金融危機が、第二次大戦後に続いてきたドルを基軸通貨とし、米国のパワーに依存した世界経済の枠組みを、見直す契機になりつつあることも、認識すべきだろう。



4―10月の対日直接投資4割減 金融危機で海外勢、内向きに
 金融危機の影響で、外資による国内企業買収や日本法人の設立といった対日直接投資に急ブレーキがかかっている。2008年4―10月の直接投資額は前年同期に比べ約4割減少し、08年度は03年度以来5年ぶりに前年実績を下回る見通しとなった。資金面での余力が急減した海外勢が、自国を中心に内向きの投資に傾いているのが背景。今後は事業撤退や出資引き揚げも増えそうで、資本流入の縮小は雇用など実体経済の悪化に拍車をかける恐れもある。
 財務省・日銀の国際収支統計によると、08年4―10月の対日直接投資額(実行額ベース)は3兆4200億円と前年同期比36%減少した。07年度には約9兆円、1カ月あたりで7000億円規模の投資があったが、08年度は8月以降に前年度の半分程度となる月3000億―4000億円程度まで落ち込んでいる。



楽天、TBS株の評価損650億円計上へ 今期、4期ぶり最終赤字に
 楽天は2008年12月期連結決算で、保有するTBS株の評価損約650億円を計上する見通しだ。TBSは広告収入の減少で放送事業が低迷し、株価が楽天の平均取得額を大幅に下回っている。楽天は主力のネット通販などの好調で今期経常最高益を更新するが、評価損計上を補えず、4期ぶりの最終赤字になる公算が大きい。
 30日にも評価損計上を発表する。TBS株の29日終値は1361円。楽天は1株平均約3100円、総額1200億円を投じてTBS株の19.8%を購入し、筆頭株主となっている。だが株価は平均取得額の2分の1を下回って推移。期末の最終売買日である30日終値も2分の1を下回れば、取得額と時価との差額を特別損失に計上する強制評価減の対象となる。



主要製造業、海外で苦肉の値上げ 円高下、収益目減り防ぐ
 金融危機後の急激な円高を受け、主要製造業が海外で値上げに動く。ソニーは2009年1月以降、欧州でデジタルカメラなどの出荷価格を上げる。キヤノンも欧米でプリンター用インクカートリッジの値上げに乗り出した。工作機械やトラックなど生産財でも同様の動きが広がる。円高や世界景気後退による収益落ち込みを少しでも補う狙いだが、世界でデフレ懸念が強まるなか、店頭で値上げが浸透するか不透明な面もある。
 各社が上げるのは現地の販売会社向けの出荷価格。ソニーはデジカメやテレビなど主力製品を値上げする。上げ幅は国により異なるが、機種によって10%以上とみられる。同社は今期の為替レートを1ユーロ=140円と想定しているが、足元では一段と円高水準で推移しており、収益改善に向け値上げに踏み切る。



中国の鉄鋼会社、収益悪化に拍車 11月は7割弱が赤字に
 【北京=多部田俊輔】中国の鉄鋼会社の収益悪化が止まらない。業界団体の調査によると、11月は中堅・大手71社のうち7割弱の48社が赤字となり、71社の合計損益は127億元(約1680億円)の赤字となった。赤字幅は10月の2倍以上に拡大しており、中国の製造業の不振を改めて示した。
 中国の経済紙、中国証券報が29日に伝えた。鉄鋼会社は今年初めなどに購入した高値の原材料を使って生産している一方、建設や自動車などの需要減退で鋼材価格が低迷しており、採算悪化が続いている。
 71社の合計損益は10月に6年ぶりの赤字に転落したばかり。10月の赤字企業数は42社で、赤字幅は58億元だった。中国政府は鉄道建設などの景気刺激策を発表したが、鉄鋼メーカーの収益改善につながるのは09年春以降とみられている。



景気の「山」は07年10月、内閣府判定へ 回復期、最長の69カ月
 内閣府は、2002年2月から続いた日本の景気回復局面のピークを07年10月とする方向で検討に入った。正式には来年1月末に有識者らの意見を聞いたうえで決めるが、仮にピークをこの時期に設定すると、景気回復は69カ月間続いたことになり、戦後最長を記録する。一方、後退局面は翌月の07年11月に始まったとみなす。
 内閣府は「景気動向指数研究会」(座長・吉川洋東大教授)を開き、事前に有識者の意見を聞いた上で、景気拡大のピークである「山」、逆に下げ止まって底を打つ「谷」をそれぞれ決めることにしている。



シャープ、特損500億円超 今期業績下方修正へ
 シャープは2009年3月期に500億円を超す特別損失を計上する。出資先のパイオニアの株式減損が360億円を超えるほか、国際カルテルの罰金が100億円強に上る。09年3月期の純利益は前期比41%減の600億円を見込んでいるが、主力の液晶事業の採算も悪化しており、今後、業績予想を大幅に下方修正する見通しだ。
 シャープは07年12月にパイオニア株を1株1385円で取得した。現在3000万株保有するが、29日終値は152円と取得時から89%下落している。四半期ごとに期末1カ月間の平均株価が簿価から5割以上下落した場合は減損対象となるため、12月末に約367億円の損失を計上する。他の保有株にも損失が発生、有価証券関連の損失は400億円規模となる見込み。



加藤・山崎氏が新党視野、来月にも新たに勉強会
 自民党で年明けから、離党や新党結成などの分裂含みの動きが強まる情勢となった。加藤紘一・元幹事長と山崎拓・前副総裁らは次期衆院選前の新党結成を視野に、1月にも新たな勉強会を発足させる。
 また、道路特定財源一般財源化を巡る政府の対応に反発する中堅・若手議員の一部が関連法案の採決で造反を模索している。民主党側も、自民党内の造反・離党を誘う動きを強める構えで、1月5日召集の通常国会は政界再編につながる緊迫した展開が予想される。
 加藤、山崎両氏らの勉強会は「日本の国のかたち、あり方を考える」を主題に、自民党議員と、学者や文化人も交えて5〜10人規模となる見通し。構造改革路線を批判する立場から、「行き過ぎた市場原理主義の是正」を旗印とした勢力の結集を目指すとしている。民主党議員の一部を連携相手に想定しているとされるほか、公明党との協力を探る可能性があると見られている。
 一方、道路特定財源一般財源化では、新たな「地域活力基盤創造交付金」の使途の8割が道路にあてられる予定で、「道路特定財源の一般財源化を抜本的に進める会」の河野太郎水野賢一柴山昌彦の各衆院議員ら自民党の中堅・若手が「骨抜き」と反発。政府が1月下旬をめどに作る関連法案に関しても、「新交付金に縛りをかけるなら賛成し難い」と態度を硬化させている議員もいる。
 定額給付金事業では、先の衆院解散要求決議案の採決で造反した渡辺喜美・元行政改革相が、同事業を盛り込んだ2008年度第2次補正予算案に反対する可能性を示唆。自民党内で同調者が出る可能性がある。
 一連の動きには、麻生内閣の支持率急落などが作用している。参院で主導権を握る民主党は同党会派単独では参院過半数がなく、自民党の一部との連携を模索する動きが出ている。