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VIERAケータイ」で勢いに乗るパナソニックの強みと弱み 秋冬商戦メーカー編 <COLUMN1>
 携帯電話の新機種が相次いで店頭に並び出し、いよいよ冬商戦が本格化してきた。パナソニックモバイルコミュニケーションズは昨年ヒットした「VIERAケータイ」を軸にシンプルなモデルも揃え、幅広いラインアップで勝負を挑む。
 パナソニックモバイルといえば、昨年投入した「P905i」の大ヒットが記憶に新しい。画面部分が横開きになるワンセグが見やすい機構を採用しただけでなく、「VIERAケータイ」というブランド効果もあって、長い期間、品薄状態に陥ってしまった。
 P905iはいまでは珍しい100万台を超える販売台数を記録した。そして、VIERAケータイシリーズは、P905iから9カ月で5機種が発売され、累計でも300万台を突破している。
 国内におけるメーカー別シェアも18%に近づく状況にある。VIERAケータイの効果により、平均単価も上昇した。出荷台数予想は微減であるが、金額ベースでは前年を超えると見られている。まさにいまはVIERAケータイあってのパナソニックモバイルなのだ。
■簡単な仕掛けで使い勝手が一気に向上した「P-01A」
 今回の冬モデルで注目はやはりNTTドコモの「P-01A」になるだろう。これまでの“弱点”を克服し、完成度の高いVIERAケータイに仕上がっているのが魅力だ。
 P905iでは、画面を横開きにしてワンセグを見やすくしたのが使い勝手のよいポイントだったが、一方でテンキーが横を向いてしまうため、操作がしにくいという難点があった。夏モデルの「P906i」では横開きでワンセグ以外の機能を使えるようにしたが、かなりテンキーが横向きとなるため操作性に難があった。
 しかし、P-01Aではテンキー部分の表示が切り替わり、横画面にした際に数字の表記などが手前に向くように改良されている。横画面にしても文字入力などが俄然しやすくなったのだ。
 実はこの手品のような仕掛けは、テンキー部分の下に縦書きと横書きに数字を印字したシートを埋め込んで、ヒンジを開く際の力を利用してシートを数ミリ動かして表示を切り替えているだけに過ぎない。原理としては「なんだ。そういうことか」とあっけにとられるほど簡単なのだが、ちょっとした仕組みで使い勝手が一気に向上するのには驚いた。
■廉価版のVIERAケータイも用意
 最近のパナソニックモバイルといえば、積極的に横展開をしてきたのが目につく。例えば、NTTドコモ向けに冬に投入したP905iは、ほぼ同じデザイン、仕様のままで春にソフトバンクモバイル向けに「920P」として供給した。夏も同じように、P906iを921Pとして供給している。
 この冬商戦からは、新たに縦にも展開を広げることになった。それがドコモの「P-03A」だ。
 ぱっとした見た目はまさに横開きするVIERAケータイ。しかし、フルワイドVGA液晶を搭載するハイスペックなP-01Aとは異なり、ディスプレーはフルワイドQVGAに抑えられている。薄さを重視して、テンキー部分の向きが変わるギミックは施されていない。スペックを落とすことで、P-01Aよりも安く価格を設定することができるという。
 従来の「90X」と「70X」というシリーズの関係に近いが、あえてスペックを落として価格を下げることで、昨今、割賦販売制度の導入によって「ケータイが高い」と感じているユーザーに訴求していくようだ。
 もうひとつ、今回のパナソニックモバイルの取り組みとして斬新だったが、同じくドコモの「P-02A」だ。
三菱電機の「スピードセレクター」を借用
 P-02Aはスライド端末なのだが、名称が「スピードセレクター」という三菱電機が持っていた機構をそのまま採用している。これは今年春に携帯電話事業から撤退した三菱電機から許諾を受けたものとなっている。
 三菱電機といえば、コンパクトなスライド端末で若い女性を中心に人気のあったメーカーだ。同社が撤退したことで、次の機種の購入に迷う三菱ユーザーをどのメーカーが獲得していくかに注目が集まったが、まさかパナソニックモバイルが同じスライドでしかもまったく同じスピードセレクターを搭載してくるとは思わなかった。
 実際、メニュー画面はパナソニックモバイルのままなので操作性はまったく同じではないが、スピードセレクターの感触などは三菱電機製とほぼ同等となっている。本体カラーなどもかつての三菱電機を彷彿とさせるものに仕上がっているといえるだろう。
NTTドコモ注力、他キャリア向けは力不足?
 VIERAケータイやスライド端末など、NTTドコモ向けには気合いの入ったモデルを投入するパナソニックモバイルだが、他キャリア向けとなるとやや個性に乏しいといった印象を抱いてしまう。
 au向けの「W62P」は過去のモデルのマイナーチェンジのような感じを受けるし、ソフトバンクモバイル向け「830P」はワンタッチ機能を充実させてはいるが、個性や尖った印象は感じない。
 au向けに関しては現在、他社のプラットフォームを利用しており、本格的にVIERAケータイを作ろうと思えば、共通プラットフォームである「KCP+」を採用する必要がある。しかし、KCP+を使ってVIERAケータイを作ろうと思えば、ワンセグ部分を独自に開発しなくてはならないなど、かなりコスト増を余儀なくされるはずだ。
 一方、ソフトバンクモバイル向けの830Pは、地味ではあるが販売数をかなり稼ぐモデルとして期待されているようだ。今回、ソフトバンクモバイルから発表された冬モデルのラインアップのなかでも、相当数の調達量を見込まれているらしい。
 「実質負担金無料」といった売り方で、契約数を獲得するためのモデルになるようだ。
■ラインアップに欠けているモデル
 パナソニックモバイルは現在、まず国内でトップシェアを獲得していくことを最優先課題に置いている。そのため、パナソニックグループのテレビやカーナビ、ノートパソコンといったハードだけでなく、他のインターネット企業のサービスとも連携していくと説明する。国内で新しい市場を創造していくことにまずは力を注ぎ、その後、海外への展開を模索していくようだ。
 冬モデルではVIERAケータイを中心に、830Pなど数を稼げるモデルを揃えてきたパナソニックモバイル。だが、順調そうに見える一方で、この商戦でシャープやNEC富士通が投入してきたタッチパネルケータイを用意できなかったのは気になるところでもある。



シリコンバレーレイオフ事情 グーグル、非正規社員を大量解雇(COLUMN2)
 クリスマスを前に、ここシリコンバレーもすっかりホリデー気分に包まれている。しかし、家族へのプレゼントに頭を悩ませてばかりいるわけにもいかない。多くの企業がホリデー休暇を境にレイオフ(一時解雇)を実施するからだ。クリスマスが終わったら、帰るべき会社がなかった──そんな状況が、ここにも押し寄せてきた。
 米メディアは12月に入っても「世界大恐慌に並ぶ不況」と連日大騒ぎを続けている。しかし、国土が広いアメリカは地域による差も大きい。今回の不況はニューヨークを中心とする東部経済圏を直撃した。ニューヨークの知人などに聞くと「街がすっかり元気をなくした」という。
■直撃を免れたシリコンバレーだが
 一方、ここシリコンバレーは、直接の被害を免れている。正直なところ、2000年春にやってきたネット不況に比べれば「遙かに軽い」というのがサンフランシスコ湾岸地域の現状だろう。とはいえ、市民の買い控えや企業のIT投資削減が始まり、ハイテク業界でも不況対策が強まっている。
 コストカットはもちろんだが、ホリデーシーズンを迎え、人々の心配はレイオフに集まっている。ただ、シリコンバレー企業の人員削減は急に始まったわけでもない。10月には、イーベイが1000人のレイオフを発表したほか、ゼロックスが3000人、エレクトロニックアーツ(EA)が600人、ヤフーは10%削減(約1430人)といった具合だ。最近システムインテグレーター大手のEDSを買収したヒューレット・パッカード(HP)は向こう3年間で2万4600人の削減を狙っている。
 こうしたレイオフの動きは11月に裾野をひろげた。サン・マイクロシステムズが発表した6000人の大型レイオフは別格として、付加価値ネットワーク事業者のアカマイが7%、ブログサービスのシックス・アパートが8%、パームが10%、SNSのリンクド・インが240人など、人員削減の波は中堅から中小事業者へと広がっている。
 来年はより厳しい状況に入ると各社は判断しており、年明け最初の決算報告が出るころには「レイオフ第2波」がシリコンバレーを襲うと言われている。
■注目のグーグルも減量経営へ
 寒風が吹き始めたシリコンバレーで、注目を集めているのがグーグルの動向だ。インターネット広告業界でトップを走る同社は、2000年のネット不況でも「成長が止まる」ことはなかった。しかし、現在は携帯電話用OSやネット・アプリケーションなどに事業多角化を進めており、当時に比べて高コスト構造になっていることは否めない。グーグルは強気の姿勢を崩していないが、もし広告市場が落ち込めば、今回は同社でさえも「成長維持が難しい」との意見もある。
 全体として、広告市場の冷え込みは急速に進んでいる。テレビ広告の業界団体TBA(Television Bureau of Advertising)は11月、2009年のTVスポット広告市場見通しをマイナス7〜11%程度と修正した。9月の同予想はマイナス2〜5%であり、2カ月足らずで大幅下方修正を強いられた格好だ。
 ただ、オンライン広告は伸び続けるとの意見もある。調査会社イーマーケターが12月1日に発表した2009年のオンライン広告予想は、前年比約8.9%増の257億ドルとなっている。検索連動型広告の成長率をみても、2008年の前年比21.4%増には及ばないが、14.9%の成長が続くとしている。
 そうしたなか、話題を呼んだのがグーグルの雇用削減に関するニュースだ。シリコンバレーの情報サイト「WebGuild Silicon Valley」は11月24日付で、グーグルが「密かに」レイオフをおこなっていると報じた。米国では、レイオフなどの重要経営案件については、証券取引所に提出する業績報告書に記載する義務がある。グーグルの決算報告にはレイオフの記載はないにもかかわらず、人員削減をしている──と同誌は厳しい。しかも、雇用削減の対象は1万人にも上るという。
非正規社員をカット
 このからくりは、グーグルが大量の非正規社員を抱えているためだ。彼らはインターンコントラクト・ワーカーなどと呼ばれ、正規社員のような健康保険やストックオプション、長期雇用契約などが与えられていない。しかし、社内での仕事は正規社員と変わらず、サラリーなどは会社の帳簿上で経費(operational expenses)に分類されている。グーグルは、非正規社員の数を公表していないが、もし1万人が正しい数字とすれば、同社社員の3人に1人は非正規社員となる。
 グーグルは最近、多数の非正規社員を抱えていることを認め、また非正規社員約3000人を解雇したと発表している。同時に、300人の正規社員も退職した。グーグルが従業員数について社員に厳しく口止めしていることはシリコンバレーで広く知られているが、今回のニュースでその一端が明らかになった。
 急成長を続けてきたグーグルは、大量の社員を採用してきた。ここ1〜2年、証券市場は、その急激な人員増加を懸念し、鋭い目を向けていた。そうした背景から、同社は公表する必要がない非正規社員で人員を補充してきたのではないかと業界関係者は見ている。いずれにせよ、グーグルもまた、シリコンバレー不況に備えて減量経営に入ったことは間違いない。
◇   ◇   ◇
 2000年のネット不況から立ち直るまで、シリコンバレーは3年の月日が必要だった。東部のような直撃を免れたのは幸いだが、今回の経済危機は遙かに深刻でより長期化の様相を示している。どうやら、ホリデーのたびにレイオフにおびえる憂鬱が、当分続くことになりそうだ。