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クラウド」陣営づくりで先行 セールスフォースの提携戦略 <COLUMN>
 米国でいよいよ、「クラウド・コンピューティング」市場を巡るビジネス競争が本格化してきた。マイクロソフトは10月27日、クラウドサービス「Azure(アズール)」を発表し、11月3日にはセールスフォース・ドット・コムが本格的なクラウド戦略を発表するなど、大手の動きが活発化している。今回は、サンフランシスコで開催された展示会「ドリームフォース08」などを取り上げ、クラウド・ビジネスの状況を追ってみたい。
■企業から個人まですそ野広い市場
 私たちは日頃、ソフトウエアのインストールやアップグレード、データのバックアップやセキュリティーなど、パソコンの雑務に煩わされることが多い。ましてやサーバーを管理する企業のIT部門は、日々悩まされている。こうした面倒な作業を忘れて、メールやチャット、文書作成や業務処理に集中できたらどんなに幸せだろう。そんな夢を実現させようとしているのが、クラウド・コンピューティングだ。
 インターネットを使ってアプリケーションを利用するクラウドは、2010年以降のコンピューター・モデルの本命と言われている。クラウドでは、ソフトウエアやデータはすべて、データセンターで専門事業者が管理する。
 ユーザーは、インターネットを使ってクラウドプロバイダーにアクセスするだけで、ワープロでも電子メールでも、もっと本格的な財務管理などの業務ソフトでも利用できる。極端な話、クラウド時代になれば、個人でソフトウエアを購入する必要もなく、企業はウェブサーバー以外は必要がなくなる。
 このように難しいことはすべてクラウド(雲=インターネット)の向こうに隠してしまい、自由自在にコンピューターを使うイメージから、この名前が付いた。また、クラウドはパソコンだけでなく、テレビや携帯、ビデオカメラやデジカメなどにもサービスを提供できる。
■アプリケーションとデータセンター
 クラウドのビジネス形態は、大きく分けてクラウド・アプリケーションとクラウド・データセンターに分かれる。
 アプリケーションを提供する企業はサース(SaaS、Software-as-a-Service)プロバイダーとも呼ばれ、ソフトウエアをウェブ経由で提供するとともにアップグレードやデータのバックアップなどもすべて管理する。クラウド・アプリケーションではウェブサービスマッシュアップなどのウェブ2.0的手法も重要な位置を占め、最近は、SaaSマッシュアップ、各種ウェブサービスを組み合わせて、使いやすい独自の企業アプリケーションを作るパース(PaaS、Platform-as-a-Service)も伸びている。
 一方、クラウド・データセンターは、クラウド・アプリケーションを動かすための専用設備を提供する。従来のデータセンターはアプリケーションごとにサーバーやネットワークを購入し、組み合わせてサービスを提供していた。企業は、事業所に散らばっていたサーバーをデータセンターに集約することでコストダウンというメリットを享受してきた。
 一方、クラウド・データセンターでは、仮想化技術を使って大型コンピューターの中に仮想サーバーや仮想OS、仮想ネットワークなどを自由に作り出せる。これによりユーザーは、サーバーやネットワークなどのIT資産を必要な量だけ、必要なときに利用できる。つまり、事業の拡張や組織変更などに伴って、最適な規模のコンピューターシステムを素早く構築・維持できる。
■提携戦略を加速するセールスフォース
 米国では2007年末あたりからクラウド・ビジネスの競争が始まった。
 アマゾンがアマゾン・ウェブ・サービシーズを通じて展開する「EC2(エラスティック・コンピュート・クラウド)」は、代表的なクラウド・データセンターだ。仮想ハードだけでなく、サーバーOSやデータベース、開発ツールなども複数用意している。 IBMも「ブルー・クラウド・プロジェクト」を発表、大手電話会社のベライゾン・コミュニケーションズAT&Tクラウド・データセンターの戦略を発表している。また今年の後半には、先行するアマゾンを追ってグーグルが「App Engine」を、マイクロソフトが「Azure」を発表した。「Azure」はウィンドウズに最適化したクラウド・データセンターを提供するためのサービス基盤となる。
 こうして各社がクラウドに力を入れ始めるなか、いち早く提携戦略を展開してリードを狙っているのが、顧客管理(CRM)システムのSaaSを主力とするセールスフォース・ドット・コムだ。同社は11月3日にサンフランシスコでプライベート展示会「ドリームフォース08」を開催した。同展示会ではクラウド・コンピューティングを前面に押し出すとともに、フェースブックやアマゾン・ウェブ・サービシーズとの提携を発表している。
 フェースブックは会員数1億2000万を抱えるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の大手であり、そのトラフィックは世界の主要ウェブサイトで第4位に位置する。特に、2007年5月に発表したフェースブック・プラットフォームは、ユーザーが自由にアプリケーションを開発し、同社サイト内で公開できる「ユーザー・ジェネレイテッド・アプリケーション(アプリ投稿運用サービス)」時代を切り開いた。
 これは見方を変えると一般消費者向けのPaaSであり、現在フェースブックのサイトには28万を超えるアプリケーションがあふれている。また、世界160カ国で40万人を超える開発者が同プラットフォーム向けソフトを開発している。つまり、フェースブックは会員制のクラウド・アプリケーション・プロバイダーともいえるのである。
 今回の提携では、セールスフォース・ドット・コムの企業ユーザーがフェースブックを使って社内SNSを構築したり、セールスフォース側の人事管理システムからフェースブック会員に求人案内を出したりといった相互サービスが可能になる。
 同じくセールスフォースと提携したアマゾンのEC2は、登録開発者数が44万を超え、個人から中小企業市場を狙ったクラウド・データセンターとしてトップの位置を確保している。今回の提携では、アマゾンのEC2をベースに開発したウェブ・アプリケーションをセールスフォースのプラットフォームで運用できるようにする。
クラウドでもマイクロソフト包囲網?
 セールスフォースは昨年、グーグルと提携して「Google Docs」や「AdWords」をユーザー企業が利用できるようにするなど、クラウド分野でアプリ、データセンターそれぞれの大手と積極的に提携してきた。クラウド・ビジネスがまだユーザーがほとんどいない黎明期にあるにもかかわらず、なぜ提携を急ぐのか。
 同社の提携戦略を見ていると、製造業における系列化を思い起こさせる。米国流にいえばプラットフォーム・ビジネスである。同社は基幹業務ソフトでは自社のプラットフォームを構築し、その一方でSNSではフェースブックを、ワープロ表計算など個人の生産性を高めるためのソフトではグーグルを取り込んでいる。また、電話システムでは最近BTに買収されたVoIPベンチャーのリビット社を、携帯アプリケーションではモトローラやRIMなど各社がパートナーとなっている。
 クラウド・ビジネスでは新規ユーザーを開拓する前に、既存顧客をベースとしたプラットフォーム争奪戦が先行している。今後、基幹業務系ではオラクルやSAP、セールスフォースなどが提携競争を進めていくだろう。また、個人向けソフトの分野ではグーグルが大手プラットフォームへの浸透をはかっていくに違いない。
 興味深いのは、マイクロソフトの動きだ。同社は、OSから個人向けソフト、基幹業務アプリ、ポータル、検索広告ビジネスなどすべてを内製する戦略をとっている。クラウドでも、こうした多彩な社内資産を「Azure Service Platform」としてまとめる方向に進むだろう。
 そうなると、クラウドの市場競争でも内製主義のマイクロソフトに対して、セールスフォースなどの系列グループが包囲網を構築する構図が見えてくる。また、IBMやHP、AT&Tベライゾン・コミュニケーションズなども、大企業向けクラウド・ビジネスで合従連衡を繰り広げるだろう。一方、アマゾンやグーグルは、個人から中小企業というこれまでデータセンターとは無縁だった新市場をクラウドで切り開こうとしている。
◇  ◇  ◇
 生産技術に固執しソフトウエアを軽視してきた日本は、マイクロソフトやオラクルのような世界に通用するソフトウエア企業を生み出せなかった。そのため、今回のクラウド・ビジネスでもプラットフォーム争いに参画できるような企業は見あたらない。もちろん、プラットフォームに乗せるためのマッシュアップクラウド用携帯端末などでは、日本も重要な位置を占めることができるだろう。
 とはいえ、世界規模のソフトウエア産業を持たない日本はパソコン、インターネットと10〜15年おきにやってくる技術革新の波に「乗り遅れ」続けている。今回のクラウド・ビジネスでも、そのチャンスをつかむことはできないだろう。覇権争いが始まった米国の現状を見ると、日本もソフトウエア産業の長期的な振興策に、産学官そして消費者を巻き込んで本格的に取り組む時期にきていると言えるのではないだろうか。



米政府、シティ救済で不良資産30兆円保証 1.9兆円資本注入
 【ニューヨーク=財満大介】米連邦準備理事会(FRB)と米財務省、米連邦預金保険公社(FDIC)は23日、経営難に陥っている米最大手銀シティグループが抱える不良資産3060億ドル(約30兆円)を保証する救済策を発表した。損失が一定額を超えた分を政府が肩代わりする。同時に200億ドル(約1.9兆円)の公的資金も注入する。
 シティは財務悪化懸念から株価が急落しており、先週末から政府と支援内容を協議していた。保証対象の資産は、値下がりの激しい住宅ローンや商業用不動産ローンを裏付けとする証券化商品など。保証や資本注入の財源には金融安定化法で定めた計7000億ドルの公的資金をあてる。



シティの普通株配当を実質禁止、役員報酬に上限 米政府が条件
 【ニューヨーク=財満大介】米政府は、最大手銀シティグループの救済に伴い、自力増資のメドがつくまで実質的に同社の普通株配当を禁止する。具体的には今後3年間、シティが1セントを超える四半期配当を出す場合には政府の同意が必要。同意の条件として「適切な額の普通株増資を行える能力」を挙げた。
 またボーナスを含む役員報酬の体系を見直し、政府に提出するよう求めた。長期的な企業利益に対する報酬を基準とし、金額に「適切な上限」を設ける。
 利益が社外に流出するのを避けるとともに、多額の公的資金を使った金融機関救済に対する国民の反発を和らげる狙い。



東京新聞社説】
米ビッグ3救済 自国企業のためでなく
2008年11月24日
 米ビッグスリーの救済策が十二月へと先送りされた。これから再建計画というのでは当然だ。失業者の痛手を最小化する自国企業の支援にとどまらず、自由貿易体制の堅持も忘れてはならない。
 経営危機が深刻化する米自動車大手三社(ビッグスリー)の救済策をめぐる米議会の公聴会ゼネラル・モーターズ、フォード、クライスラーの首脳は再建計画どころか自らの経営責任にも触れることなく、資金繰り支援の懇請に時間を費やした。
 支援規模は民主党案のつなぎ融資二百五十億ドルと、既に決まっている環境対応車の研究開発費二百五十億ドルの計五百億ドル。いずれも公的資金だ。この救済案に共和党議員は「経営破綻(はたん)の時期を遅らせるにすぎない」とかみついた。民主党ペロシ下院議長もさすがに抗しきれなかったようだ。「経営計画を出さなければ資金も出せない」と採決を見送った。納税者の理解を得るためには当然だ。
 米自動車産業は一九七〇年代の石油危機でも経営難に陥っている。日欧が低燃費車に取り組んでいるのに、主力商品は相も変わらず燃料多消費の大型車。時代の要請からはずれた売れない車づくりが経営の屋台骨をぐらつかせた。
 日本はその巻き添えを受け、自主規制の名の下に対米輸出台数を抑え込まれた歴史がある。限りなく米国を利する保護貿易に近かった。形を変えた新たな保護策は何としてでも封じたい。
 米国は七〇年代を境に日本やドイツの急成長により、経済の機関車役を担ってきた製造業の競争力を著しく低下させた。そこで成長のエンジンを米国に比較優位のある金融部門へと切り替えている。
 ところが頼みの金融も米国発のサブプライムローン問題が世界景気を後退させ、米国内では住宅価格の急落で低所得者層が困窮にあえいでいる。自動車産業にさらに影響が及ぶと収入が安定している中間層も揺さぶられるだろう。
 オバマ次期米大統領は「自動車産業は米経済の中軸」と支援を鮮明にした。その必要性は理解できるが、政策失敗の逃げ道を外資系企業を排除して自国企業を優遇する保護策に求めるべきではない。自由競争のルールを逸脱すればモノの動きが細って経済を縮小させる。三〇年代の世界恐慌で得た教訓だ。
 審議再開にあたり、米議会は自国企業の利益ばかりに目を奪われず、世界経済にも広く目配りした救済策をまとめてほしい。