…(゜Д゜;)新聞

東京新聞社説】
週のはじめに考える すさむ世情と政治空白
 お尋ねします、麻生首相に。世の中ひどくすさんでいませんか。なのに政治はなすすべなく漂っていると思いませんか。流れを変える余力はお持ちか。
 ひどい事件が続きます。近くは元厚生次官宅の襲撃。犯行の動機もいまだ不明なのが不安をあおります。民主社会を脅かす卑劣な行為には、ひるまず、みんなで立ち向かわなくてはいけません。
 国民の安全と安心を何をおいても全力で守るのは、政権を担当する最高責任者の務めでありましょう。ここぞの場面でしたのに、先頭に立つべき首相のコメントには強い憤りが感じられない、と野党などから批判がでていました。
政権二カ月、滑る言葉
 あろうことか、自民党の厚相経験者からは、この凶行を招いたのは年金行政の失態を追及する野党やマスコミだ、との発言が。お門違いもいいところです。
 首相はこれを「言論の自由は誰にもある」と黙認しますか。党首として叱責(しっせき)すべきでしょう。言葉が乱れ、それが、すさむ世相に拍車をかけていませんか。航空自衛隊トップが文民統制そっちのけの危ない言動を繰り返したのも、ついこの間のことでありました。
 麻生政権が発足して二カ月になります。首相就任時の私どもの社説は首相の口から発せられる「言葉の質」に注意を喚起しています。まさかこのわずかな期間に懸念が現実になるとは、正直いって思いもしませんでした。
 お医者さんには社会的常識の欠如している人が多いとか、後で謝罪と撤回を迫られるような放言をしたり、二兆円もの巨費を投じる定額給付金をめぐって、やっかいなことは自治体で、それが地方分権でしょ、と言ったり…。
 バー通いや漢字の“読み違い”で自国の首相を自虐的に笑う風潮と私たちは一線を画します。が、この乱れようは看過できません。
解散逃げた大きなツケ
 いかにも「思いつき」みたいな言葉が滑って新たな騒動を引き起こし、そのこと自体、統治権力の「空白」を内外に印象づけます。
 来年度予算の編成で焦点の一つになる道路特定財源の使途。首相は一兆円を地方の自由になる交付税にしたいらしいのですが、それを口にしたとたん、道路にカネが回らない、と反発する自民の族議員から「首相発言は黙殺だ」の声が公然と噴き出しました。
 首相が日本郵政グループ株式の売却を「凍結した方がいい」と語れば、自民の郵政民営化勢力からすぐさま「発言訂正の要求」が飛び出します。
 どの言い分に理があるかはさておき、首相の威信が陰っているというか、重みがない。与党が首相を侮る。異様で深刻な事態です。
 なぜこうなったかを考えましょう。そもそもこの政権は、迫る総選挙の顔に麻生さんをと、自民、公明の与党が選択しての発足でした。首相がその気だったのは月刊誌に寄せた手記で明らかですし、与党幹部も認めています。
 でも世論の支持が芳しくなく、取り巻き連中は選挙先送り論。米国発の金融危機もあって衆院解散をためらい、首相は「選挙勝利が天命」の前言を翻したのでした。その大きなツケが回った、としか言いようがありません。
 すぐに選挙、のはずでしたから例えば定額給付金など性格も内容もずさんで迷走します。“緊急”経済対策で景気後退に備えると首相が記者会見までした補正予算案は、今の国会でなく年明けの次の国会で処理だと政府・与党幹部が言っています。選挙向けだったのをまるで自白しているみたいに。
 それで今の国会はどうするか。会期通りに今月末で閉じるのかというと、インド洋の給油継続法案や金融機能強化の法案が野党の抵抗で未成立のまま参院に残っているので、衆院再可決の要件を満たすまで延長らしい。
 延長国会で与党は恐らく何もしない。審議の場は迷走を野党に攻められるだけだし、来年度予算編成作業の妨げになるから。政権は保身へ傾いているのです。
 とはいえ今のご時世、予算づくりは難しい。年金や医療、社会保障のお金が足りない。借金漬け財政も限界。増税に頼るにせよ、前提になる経済の改善が一体いつになるか、見当もつきません。
 国民の信任を背にする本格政権でないと難題に取り組む資格すら疑わしい。私たちが総選挙を求めてきた理由は、これなのです。
要注意の投げやり空気
 政治の空白を心配します。このままでは政治は何も決められそうにない。ならば自分たちの一票で決めさせろと、心ある有権者が言っているのが聞こえませんか。
 人々がよりどころを失えば投げやり気分が広がって世情も一層すさみます。その先に暗い時代がくるのは嫌だから、首相に求めます。初心に戻って出直しを、と。



領土問題解決、ロシア大統領「次世代に委ねない」
 【リマ=犬童文良】ペルー訪問中の麻生太郎首相は22日午後(日本時間23日午前)、リマ市内のホテルでロシアのメドべージェフ大統領と約1時間、会談した。大統領は北方領土問題解決と平和条約締結交渉について「次世代に委ねることは考えていない。首脳間の善意と意思があれば解決できる」と表明した。
 両首脳は首脳レベルの集中的な政治対話を来年実施することで一致した。来年初めのプーチン首相来日に向け、調整していくことになった。
 麻生首相は会談で「平和条約交渉が経済関係に比べて進展していない。官僚のメンタリティーを是正しないといけない」と指摘した。両首脳は領土問題と平和条約交渉の最終的な解決に向けた具体的に作業に入るよう、事務方に改めて指示を出すことで一致した。



「ちんぴらの言いがかり」 小沢氏が首相に不快感
 民主党小沢一郎代表は23日のNHK番組で、麻生太郎首相が2008年度第二次補正予算案審議をめぐり小沢氏への不信の念を示したことについて「そのへんのちんぴらの言いがかりみたいな話で、一国の首相として情けない限りだ」と、あらためて強い不快感を表明した。
 その上で、政府が二次補正の今国会提出を見送る方針であることに関し「年末に(経済状況が)しんどくなる。経済対策をしないで来年だと言っている。これは国民が本当に怒る。その声を無視できなくなると確信している」と述べ、首相が早期の衆院解散に追い込まれるとの認識を強調した。
 審議拒否や参院での首相問責決議案提出については含みを残しながらも、そうした手段を取らなくても首相が辞任せざるを得なくなる可能性を指摘した。



2次補正後に追加対策も 中川財務相
 中川昭一財務相兼金融担当相は23日、NHKの番組で、景気が一段と悪化した場合には「財政、税制、金融を含め、必要なことがあればやっていく」と話し、2008年度第二次補正予算が成立した後でも、追加対策を検討する可能性があるとの考えを示した。
 民主党が、開会中の臨時国会に第二次補正予算案を提出するよう迫っていることに関しては「やれることからやる。中小企業の資金繰り対策は別の法案で審議している」と反論。金融機能強化法の改正を早く成立させるべきだと訴えた。
 定額給付金は来年3月末までに支給する方針を強調。税制改革については「景気を良くした上で、消費税を含めて税制を抜本的に改正する」と述べ、3年後をめどに消費税率の引き上げを検討する意向を示した。



「不況に強い」ゲーム産業は世界経済危機とも無縁? <COLUMN>
 米国発の金融危機が世界経済を揺るがせている。企業の業績見通し修正も相次いでいるが、景気後退はゲーム産業にどんな影響をもたらそうとしているのかを報告する。
アイスランドのゲーム会社を見舞った「危機」
 金融危機が直撃し、主要3銀行を国有化したことで世界的な注目を集めたアイスランドには有名なゲーム会社が1社ある。宇宙船を駆使して銀河系をめぐるSFをテーマにした大規模オンラインRPG「EVE Online」を開発、運営しているCCP Gamesだ。
 欧米を中心に世界全体にサービスを展開しており、約15ドルの月額料金を支払う23万人のユーザーがいる。従業員は250人程度で、年間の売り上げは約3600万ドル(約36億円)。日本向けにサービスは行われていないが、成功しているオンラインゲーム会社として知られている。
 ところがアイスランドの主要銀行の国有化発表後、「CCP Gamesは大丈夫か」という懸念が、ネット上でさかんに取りざたされ始めた。この不安を打ち消すため、10月16日に、ヒルマー・ベイガー・パターソンCEOはCCP Gamesの「開発者ブログ」に「生まれながらにしてグローバル(born global)」というタイトルの書き込みを行った。その文面は、同社の経営に問題がないことをしきりと強調する内容だった。
 「今日ではCCPはアトランタ、上海、ロンドン、レイキャビクにオフィスを持ち、多様な社員とパートナー会社によって、世界全体に手を広げるグローバル企業になってきました。我々は様々な文化的な影響を持ち込むグローバルなユーザーを、EVE Onlineという一つにまとめられた世界に集めることができている。感情的で経済的な大荒れが生み出す短期の変動に対しての慣れがすでにできているのです」(筆者妙訳)
 言うまでもなく、アイスランドは人口が30万人の小国で、世界でサービス展開することなしに、成功はあり得ない。そして、グローバル展開するうえで世界中の金融機関と仕事をしているために、信用不安の影響を管理できると、ブログでは訴えている。
 CCPはこのタイミングで、コメントを出す必要があった。世界中のEVE Onlineファンがアイスランドに集まるファンイベント「FANFEST 2008」が11月6〜8日の日程で開催予定で、参加者を募集していたからだ。熱心なファンが対象とはいえ、わざわざ自費でアイスランドに飛行機で行かなければならない。参加者の動揺を抑える必要があった。
 そのためCCPは、金融不安により外貨への両替に問題が生じることはないか、主要スポンサーでもあるアイスランドの航空会社が突然サービスを停止したりすることはないか、といった質問事項をまとめたQ&Aまで公開した。また、ドルに対してクローネが約50%も安くなったことにより、アイスランドは観光地としてすばらしくなったとまで売り込んでいる。
 アイスランド金融危機が勃発して約1カ月が経過した現在でも、ゲームは問題なく継続されており、ユーザー視点でさらなる心配を感じさせる事態は起きていない。通貨変動がCCPの業績に大きな影響を与えることは予想されるが、金融危機をきっかけにゲームをやめたという書き込みは、公式サイトを探しても見あたらない。むしろ、輸出力を持つ企業として、バブル崩壊後のアイスランド経済で一躍注目を集める立場に変わりつつあるようだ。
■ゲーム産業は不景気に強いのか
 「ゲーム産業は不景気に強い(Recesion-Proof)のか」という報道が、米マスメディアでも目に付くようになった。北米のゲーム産業は、ネットバブル崩壊や2001年の9.11テロが引き起こした景気減速の影響を受けないまま、一辺倒で成長を続けてきたからだ。むしろ、テロ後は旅行を控える動きが広がったために、消費がゲームにへと向かい市場の拡大に役だった側面さえある。
 これは、日本の場合にも当てはまる。日本の消費者向けゲームソフトの売り上げがピークを迎えた90年代の時期は、「失われた10年」と呼ばれる不況期だった。しかし、日本経済が03年に底を打って再び好景気と呼ばれる段階に入って、逆にソフト市場は縮小した。 このように景気との連動が起きにくい理由は、消費者にとってゲームは高いといってもハードがせいぜい数万円、ソフトは数千円にとどまるためと思われる。自動車や住宅の比ではなく、そもそも景気の影響を受けにくい産業分野だと考えられる。
 調査会社の米NPDが10月20日Gamasutra誌に発表した北米市場のクリスマス商戦の分析では、今回の景気悪化の影響はないと述べられている。
 NPDのアニタ・フラジアー氏は次のように指摘している。「今年のセールスの結果を見ても、経済情勢の厳しさとゲームの売り上げの相関関係を見いだすことはできない。それは、経済が非常に強いときでさえ、相関関係がないという重要な事実をも示している。経済から産業へのインパクトがあるというどんな証拠もない」
 同じくNPDのミシェル・パクター氏は「ソフトウエア販売の強さはホリデー期間中に維持されるだろう。10月の販売結果は昨年よりかなりよいとの予測を得ており、悪化は考えにくい」と述べている。
 ■EAが発表した大規模リストラの意味
 一方で、影響が出ていないともいえない現象もある。
 ゲームソフト大手の米エレクトロニックアーツ(EA)は、10月30日に発表した第2四半期決算で、ゲーム市場の強さを強調しながらも、従業員の6%に当たる約600人の解雇を決めたことを明らかにした。これは相反するメッセージで構成されている。
 会見の中で、CEOのジョン・リッキティエロ氏は、1株当たり利益が減少していることを認め、この対策として検討すべき論点を4つ上げている。第一に、世界的に経済環境が厳しいこと。第二に、企業としての運営効率が悪いこと。第三に、1株当たり利益を上昇させる流れを作ること。そのため、第四として、解雇を通じて将来的なコストを減少させるとしている。
 リッキティエロ氏は、「ゲーム産業は過去の不況からみても非常に立ち直りが早い。新しいコンソール機が技術を引っ張っている場合には、不況が持つネガティブな影響を越えると、過去の歴史が示している」と述べ、ゲーム産業の過去の分析を行っている。そして現在は、3つの据置型ハードウエアがすべて成長期に入っているという前例のない時期であり、2008年に北米では22%、欧州では30%の市場成長が続いていると強調した。
 しかし一方で、「10月は、消費者と小売店がだんだんと用心をし始めている様子が指標に表れている。我々は、長期的に見た場合、ゲーム分野について楽観的に考えているが、短期的には用心深くすることが必要だ」とも述べている。
 今ひとつ、わからない説明なのは、ゲーム産業は堅調としつつも大規模なリストラに踏み切る点だ。
 直接的な理由は、EAが今年のクリスマス商戦の目玉の一つとして投入予定だった「ハリー・ポッターと謎のプリンス」が延期になったことだろう。映画の公開が11月から来年8月に延期されたため、同時発売だったゲームも発売できなくなったのだ。これによる第3四半期の影響は免れられないため、人員削減で影響を緩和したのだと考えられる。
 ただ、それ以外の要因も無視できない。EAは9月16日に「グランドセフトオート」シリーズを持つ米テイクツーに対する20億ドル(約2000億円)規模となる大型買収提案を取り下げた。9月15日にリーマン・ブラザーズが破綻して、金融危機が広がる時期と重なることを考えると、M&A市場への潤沢な資金供給を背景に、事業拡大を追求する路線が壁に突き当たったともいえる。
 世界トップのゲームソフト会社の座を争うアクティビジョンリザードに対抗しようと、多数の企業を取り込んできた拡大路線が一時的にせよ止まったと考えていいのだろう。
■買い控えは起きなくても経営に影響
 今回の同時不況で世界のゲーム産業が消費減速に直面する事態は起きにくいという見方は、どうやら妥当なようだ。不況であろうと、ゲームを遊びたいユーザーは確実に存在しており、ゲームを買い控えようという動きが広がる兆候を含んだデータは今のところない。
 一方で、企業のレイヤーでは、金融危機が大きく影響を与えている可能性がある。EAの発表から読みとれるのは、ゲーム産業にとっては、消費による影響よりも経営戦略面での影響の方が大きいのではないかということだ。株価下落によって生じた新しい局面を理解することが必要だ。