ヾ(゜Д゜)ノ"新聞

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アンドロイド携帯の品質に日本ユーザーは満足できるか? (COLUMNパート1)
 10月22日、グーグルの携帯プラットフォーム「アンドロイド」を搭載した携帯電話「G1」が、ついにアメリカでT-Mobile USAから発売になった。アップル「iPhone」に比べると静かな船出だが、それでもかなりの注目を集めている。iPhone同様にハワイに買いに行こうと思ったが、すでに予約受付は終了とのことで今回は断念してしまった。
■意気込むドコモとKDDI
 さて、日本でのアンドロイドケータイの動向だが、すでに明らかになっているように、NTTドコモKDDIから発売される見込みだ。
 ドコモの山田隆持社長は「年明けにかけて10機種程度のスマートフォンを投入する」と明言。すでに発表となっているRIMの「BlackBerry Bold」、HTC製の「Touch Diamond」「Touch Pro」に続いて、アンドロイドケータイが発売されるようだ(ほかにもノキア製がある)。今回、T-Mobile USAから発売されたG1はHTC製であることから、ドコモのアンドロイドもHTC製である可能性が高い。
 一方、KDDIは国内メーカーと協力してアンドロイドを搭載したスマートフォンを計画中。「誰もがほしいと思えるようなスマートフォンにしたい」と開発担当者が語っていることから、相当、自信のあるモデルであるようだ。KDDIとしては、来春発売予定のHTC製「E30HT」よりも、アンドロイド搭載スマートフォンのほうを「本命」と位置づけているだけに、かなり期待してもよいだろう。
 サービス面に関しては、ドコモでは「いままでスマートフォンが売れてこなかったのはiモード非対応だったから」という反省点を踏まえ、iモード対応が必須になってくるものと思われる。いずれはプッシュでiモードメールが受け取れるようになるだろう。
 KDDIはアンドロイド搭載スマートフォンを既存のEZウェブ搭載ケータイとは別のラインアップとして位置づけ、「オープンプラットフォーム対応ケータイの象徴」として、売り出していくことになりそうだ。既存のEZ関連サービスには対応しないことも視野に入れている。KDDIの小野寺正社長は「オープン化とEZウェブのような垂直統合モデルはしばらく共存する」と、22日の決算発表会見で語った。
■日本では考えられない開発スピード
 グーグルが「アンドロイド」というコンセプトを提案してから、わずか1年で製品が出たことには、やや驚きがある。確かにリナックスをベースにしており開発者も多いことから、開発スピードが速いことは予想できたが、ひとつのプラットフォームがこれほど短期間で製品に搭載されてしまうというのは、日本のケータイ業界では考えられないことだろう。
 今年2月にバルセロナで開催されたMWCでは、アンドロイド搭載ケータイの試作機がお目見えするかと思いきや、評価ボード程度しか展示されなかった。「開発が遅れている」(国内キャリア関係者)とのことで、計画通りに製品化が進んでいないことは明らかだった。一部には「初搭載機種の登場は2009年になるのではないか」とも噂されたが、結局は10月22日の発売にこぎ着けたのだった。
 高機能なプラットフォームをゼロから構築するには相当な時間を必要とする。例えば、KDDIの「KCP+」も2006年7月にコンセプトがメディアに発表されたあと、実際に製品が発表されたのは2007年秋冬モデル。さらに製品として世に出たのは2008年になってからだ。2008年夏モデルでもKCP+は完成型とは言えず、現在も進化を続けている途中である。プラットフォームがきっちりと稼働するには相当な年月が必要となる。
■日本のユーザーは満足できるか?
 アンドロイドは、アメリカのユーザーであれば喜んで使うかもしれない。しかし、ケータイに高い品質を求める日本のユーザーが満足できるクオリティーにあるかはかなり疑問だ。複数の機能を同時に動かしたときにきっちりと安定して稼働するか、セキュリティーの不安はないか、など気になる点は多い。アンドロイド開発に携わる国内関係者も「アンドロイドは決して高い品質だとは言い難い」と本音を漏らす。
 アンドロイドに日本のユーザーが満足できるような品質を求めるとなると、それだけ独自の開発コストやバグを修正する期間が必要になってくる。キャリアやメーカーとしても時間をかけざるを得なくなる。しかしそれでは、絶好の商機を逃すことにつながりかねない。
 となると、キャリアとしては「(品質においては)割り切って投入して、ユーザーに納得して使ってもらう」(関係者)というスタンスを選ぶことになるだろう。アンドロイドもiPhone 3Gのように、当初の製品版では安定して動かないかもしれないが、バージョンアップすることで徐々に品質を高めていく、という手法をとらざるを得なくなる。
 アンドロイドもiPhone 3Gもケータイの顔をしたコンピューターというほうが正しい。仮にフリーズする、データが消えるといったトラブルに直面しても、笑顔でリセットできる広い度量がないと、スマートフォンとはつきあえないのだ。
 2009年にも日本上陸すると言われているアンドロイドケータイ。日本メーカーによる高い品質を持ったケータイに慣れ親しんだユーザーに、受け入れられるだけのクオリティーにどこまで近づけるのか。興味深いところである。



視聴率ほしい民放テレビ局がNHKに負けるジレンマ(COLUMNパート2)
 今年度上半期のゴールデンタイムのテレビ視聴率はNHKが民放を押さえてトップに躍り出たそうだ。NHKと言えば民放からは「視聴率を気にしなくていいから」と揶揄(やゆ)され続けてきたわけだが、そのNHKが1位になるとはいったい何が起こっているのだろうか。
 民放テレビ局にとって、視聴率は売り上げに直結するものであり、広告取引における基準値、通貨単位と言ってもよいものだ。広告放送を行っていないNHKは視聴率が業績に直結するわけではないが、そのNHKの視聴率が好調な数字を出し続けている。
 今年はオリンピックがあり、また大河ドラマが好調であるというのは事実だろう。高齢化によって堅実で保守的なNHKの番組が受け入れられやすくなったという点もあるだろうが、一方、若年層には「上海タイフーン」のようなドラマも好評のようだ。
■視聴率の低下と悪循環
 テレビ全般の傾向として、HUT(Households Using Television)と呼ばれる総世帯視聴率は年々減少傾向にある。HUTは緩やかに低下しているのだが、これは視聴形態の変化に調査方法が追いついていないという裏事情もある。
 HDDレコーダーによるタイムシフトワンセグが加算されていないだけでなく、いわゆるテレビパソコンも調査対象にはなっていない。テレビ局にとって不利な状況になっている問題は、実は無視し難い。
 テレビ局側にも認識はあるのに踏み込めないのは、パソコンでの視聴を「認める」とタイムシフトやインターネットとの「ながら視聴」を助長するという議論があるからだ。YouTubeに対するアレルギー的な嫌悪感も根底にあるようだ。
 視聴率が上がらなければなんとかこれを上げようとするため、他局の高視聴率番組のマネをするという批判も多い。どこかで見たことがある、同じタレントばかりが出てくる等々、制作費の低下とともに悪循環に陥っている。
 一方のNHKは受信料が主たる収益源であり、視聴率に左右されにくい番組を作ってきたのは事実だ。しかし、CMの売り上げにこそ直結してはいないが、NHKも視聴率を強く意識した番組作りをしている。視聴率が高いということは、それだけ多くの人に支持されている証拠という単純な理屈によるものだ。
 今回のNHKの好調に対しても「NHK民放化反対」という警戒感ばかりが聞こえてくるのが、相変わらずの体質を象徴している。
■中学生の羨望のまなざしは…
 1998年頃だと記憶しているが、テレビの世界に身を置く私にとっては個人的に衝撃的な出来事があった。当時、私はCS放送のある番組を毎週銀座のソニービルのスタジオで収録していた。
 ソニービルといえばご存じの通り、ソニーショールームになっているわけだが、当時はビル内にスタジオがあって番組録画ができるようになっていた。スタジオはもちろん、サブと呼ばれる副調整室もガラス張りで、来訪者は放送機材に囲まれながら我々の収録風景を見ることができた。
 ある日の収録時に修学旅行の中学生のグループがやって来た。サブの中にいる我々は、彼らが私たちに向けるであろう視線を感じ取ろうとするのであるが、これがそうではなかったのだ。彼らは我々には見向きもせず、関心はちょうど発売されたばかりのカメラがついた小型のノートPCに向かっていた。彼らはインターネットに接続されたノートPCを羨望のまなざしで見つめていたのである。
 このことにどうしても合点がいかなかった私は、サブを抜け出て彼らに話しかけてみた。「ほら、そこでテレビの収録をしてるんだよ」。すると彼らは「ふーん」と一言だけ発して、すぐにまたPCに集中したのである。あれから10年、彼らも20代中ばになっているはずだ。
■民放こそ視聴率に縛られない番組づくりを
 番組の質の低下、インターネットの台頭、ゲーム機や携帯電話などがテレビの不調の理由として挙げられている。もちろんそれらも少なからざる原因であるに違いない。
 しかし、先ほどの中学生たちはそんな理屈抜きに、テレビを格好いいものとして受け止めていないのである。メディアの王者として君臨してきたテレビは急速に格好いいものから転落している。あこがれの業界人しかりだ。
 よく考えれば我々の世代でも、少年ドラマシリーズや人形劇などNHKの子供番組には夢中になったものだ。40年近くも前の話であるが、それらは視聴率を無視していたからできたもので、万人受けした番組では決してない。
 どうもテレビ関係者と話していると視聴率不振の原因をネットやゲーム、不況などの外圧に押しつけるばかりで、世の中の状況を見誤っている気がしてならない。NHKがトップに立った今こそ、民放テレビ局がこれまでの視聴率を無視して番組作りやビジネスモデルを再考するときなのかもしれない。


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