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続々登場「日本版の仮想世界」は前途多難(Column)
 米リンデンラボの3次元仮想世界サービス「セカンドライフ」に続けと、日本でもパソコン向けの同様なサービスが登場してきた。8日に「ミートミー(meet-me)」(ココア)、17日に「ダレットワールド」(ダレット)がサービスインした。
 このほかにも、サービスを検証するためのベータ版で公開している「ViZiMO」(マイクロビジョン)や、正式サービスに入っている「スプリューム」(スプリューム)、「はてなワールド」(はてな)、「スクウェア・エニックス メンバーズ バーチャルワールド」(スクウェア・エニックス)などサービスの数が増えてきた。
 さらに、8日にはドワンゴがこの夏から「アイスペース」を開始するとの発表もあり、「プレイステーション3(PS3)」向けに計画されている「Home」まで入れると、夏頃にはかなり多くの仮想空間サービスがあふれるということになる。
 しかし、本当にそれらのサービスが成功できるどうかには、多少の疑問がある。今のオンラインゲームが苦戦している現状の問題を打ち破る新しいビジネスモデルまで提案できているようには思えないからだ。また、セカンドライフが直面したようにユーザーを集めても継続的にユーザーのアクセスを集められないという問題もある。
■ユーザーが導入時に求められる「作業」という壁
 仮想空間は新しいサービス形態であっても、そのビジネスモデルは既存のオンラインゲームのサービスモデルと違わないものが一般的だ。参加は無料だが、その中で使うアイテムに課金するモデルで収益を上げるものだと考えてよい。
 今、パソコン向けのオンラインゲーム会社が苦しんでいる最大の点は、新規ユーザーの獲得の難しさである。ゲームをプレーする前にユーザーがまず行わなければならない前段階の作業が非常に多い。あるオンラインゲーム企業の役員は、ユーザーがゲームを開始するまでの煩雑さを「オンラインゲームの三重苦」と呼んでいる。それは次の3つである。
 (1)ユーザーは、何百メガバイトものソフトをダウンロードしてインストールしなければならない
 (2)さまざまな入力フォームに書き込んで登録しなければならない
 (3)クレジットカード等の番号を入力するか、プリペイドカードを購入する必要があり、そこでやっと課金可能な状態になる
 ユーザーは、オンラインゲームをやろうと決めてから、実際に開始できるまでに少なくとも30分程度は費やさなければならず、またサービスごとに自分の個人情報提供を求められる心理的な障壁を越えなければならない。
 そのうえ最近は、アイテムを実際のお金で売買するリアルマネートレード(RMT)目的のユーザーを排除するため、セキュリティーを高める工夫を施してある場合が多い。ユーザー登録時やログイン時の作業は煩雑の度合いを増している。
 このように新規ユーザーの敷居が高くなっているために、ますます敬遠される傾向が高まっている。一方で、こうした新規登録の手間を厭わないようなユーザーはゲームを次々と渡り歩く場合が多く、ゲームのコミュニティーを作ることに積極的な役割を果たしてくれるわけではない。また、そうしたユーザーはコミュニティーへの忠誠度が低いために、積極的にアイテムを購入することは少なく収益に結びつきにくい。
 オンラインゲームが大きな注目を集め、多くのユーザーを獲得できていた2003年頃には、その最初の面倒くささを越えてでも新しい体験をしてみたいという強いアドバンテージがあったためにユーザーを呼び込むことができた。
 しかし、パソコンのオンラインゲームで得られる経験の幅がユーザーにもある程度予測できるようになった現在、差別化は難しくなっている。新しい何かが登場することなしには、市場が急激に成熟するリスクに直面している。ブームの寿命は3年あまりという経験則にまさにぶつかっている。
 最初に挙げたような仮想空間サービスも、開始時に大容量のソフトをダウンロードしたり、面倒なユーザー登録などの作業を求められたりするものばかりで、現在のオンラインゲーム市場が直面しているユーザーを集める難しさにぶつかると考えられる。
 仮想世界サービスでは多くの企業が、アイテム課金以外に広告収入と企業の仮想世界への出展費用などを組み合わせたモデルを採用している。ただ、結局は人数を集めることができなければ広告効果が出ず、それらのモデルは有効に機能しない。サービス開始後すぐにユーザー数を獲得できない企業は、苦戦すると思われる。
■多様なモチベーションを提供できない現在の仮想世界
 もう一つの問題は、ユーザーのモチベーションを持続させる仕組みだ。セカンドライフは昨年、日本でも海外でも大きく騒がれたが、その失速が顕著になってきた。
 リンデンラボが毎月発表している経済指標によると、セカンドライフのユーザー登録数こそ増加しているものの成長のペースは鈍化してきている。また、07年の有料のプレミアム会員の数は9万人前後で横ばい状態が続き、成長がなかった。
 日本からアクセスしているアクティブなユーザー(1カ月のログイン時間が1時間を超えるユーザー)数も3月は2万7081アカウントと、昨年8月に4万を超えていたことを思うと減少している。少なくとも数字を見ている限り、セカンドライフは仮想世界のデファクトスタンダードを確立したという状態からはほど遠いようだ。
 類似の新しいサービスが北米で次々に登場して競争が激化したことも大きいが、ユーザーが仮想世界にアクセスを継続的に行いたいというモチベーションを持続できなかったことが要因の一つと言える。
 スタンフォード大学の研究者のニック・イー氏が、06年に「Motivations of Play in Online Games(オンラインゲームのプレーのモチベーション)」という論文を発表している。「ウルティマオンライン」「エヴァークエスト」など様々な大規模オンラインロールプレイングゲームをプレーしているユーザー3000人に対して行ったアンケート調査をまとめたものだ。
 この調査からわかったことは、ユーザーのモチベーションは競争やチームワーク、発見、カスタマイズなどの10要素にまとめられるということだ。ユーザーは、一つのゲームサービスに対しても多様な遊ぶためのモチベーションを持っており、その要素を組み合わせながら様々なニーズを満足させている。
 もちろん、この論はオンラインゲーム向けのものであるが、応用して考えた場合、仮想世界サービスでは満たすことができるモチベーションの幅が小さいのではないかと思えてくる。
 特に、達成感にかかわる要素や、他人との共同作業にかかわるチームワークの要素が弱いだろう。サービスにせっかく登録してくれたユーザーであっても、モチベーションが偏っているために仮想世界に継続的に引きつける粘りが小さいような気がする。
 目的がないと批判されがちなセカンドライフの苦戦は、多様なモチベーションを提供できなかったことに理由があり、新たに参入する仮想世界サービスも必ず同じ問題に直面することになる。
■仮想世界サービスの爆発的普及は難しい?
 動画サイトなみにアクセスしているということを意識せず簡単に利用できる状態にならなければ、仮想世界は次の爆発期には入りにくいのではないか。
 現在は、アイテム課金を主体とするビジネスモデル上の限界といった制約があり、なかなか、そこまで踏み込んだサービスは出しにくいと思われる。ある程度の成功を収めるサービスは登場するかもしれないが、セカンドライフなみの話題を集めるのはもはや難しいかもしれない。
 仮想世界という閉じた空間が、ウェブなどと完全にシームレスにつながる時代が来るまでにはもう少し時間がかかりそうな印象がしている。



年金改革読売案 医療と介護も視野に入れて(読売社説)
 日本の社会保障制度はこのままでは、ごく近い将来に必ず立ちゆかなくなるだろう。
 そうした認識に立ち、読売新聞は、年金改革の具体案を財源の在り方とともに提言する。
 これをたたき台の一つとして、国民的議論が広がり、深められ、社会保障改革が着実に前に進むことを願う。
 読売新聞の年金制度改革案は、現行の「社会保険方式」を基本的に維持しつつ、その不備や弱点を大幅に改良するものだ。
 ◆最低保障年金を創設◆
 社会保険方式は、公的年金が国民相互の助け合いであることを前提とし、老後に備える各々の努力を年金額に反映できる。その長所を生かしながら、老後の年金を一定レベルで保障する仕組みを盛り込んだ。
 具体的には、受給資格を得られる最低加入期間を、現行の25年から10年に短縮することで、ほぼすべての国民が、無理なく年金制度に参加できるようにする。
 月5万円の最低保障年金を創設し、基礎年金の満額を月7万円に引き上げる。障害基礎年金も連動して増額するため、障害者の所得保障にも資する。
 無年金・低年金の人はほとんどいなくなり、生活保護に追い込まれる高齢者はかなり減るだろう。介護保険後期高齢者医療制度の保険料が年金から天引きされる際の負担感も、軽減するはずだ。
 子どもが3歳になるまで、親の基礎年金の保険料は無料にする。若い親たちを年金制度で支援することは、少子化対策としても有効ではないか。
 さらに、社会保障番号を導入することによって、困窮世帯に対するきめ細かな減免措置や、正確で公正な保険料徴収を実現する。
 改革に必要な税財源は3・2兆円だ。年金制度の国庫負担割合を2分の1に引き上げる分を合わせると、5・5兆円になる。消費税率にして2%強である。
 無論、少ない金額ではないが、「全額税方式」と比較すれば、必要な税率の引き上げ幅は、ずっと小さくて済む。
 ◆全額税方式は困難◆
 保険料をなくし、税金で高齢者に等しく基礎年金を支給する全額税方式は、複雑な現行制度に比べると、確かに分かりやすい。
 だが、少なくとも12兆円、消費税率にして5%近い税金が新たに必要になる。年金制度のみのために、大きく消費税率を上げてしまえば、医療や介護制度の維持・充実にあてる財源の見通しが、立たなくなってしまう。
 超高齢時代にまず財政的危機に直面するのは、年金よりむしろ、医療・介護だ。団塊世代が75歳以上になる2025年、年金給付の伸びが現在の1・4倍になるのに対して、医療は1・7倍、介護は2・6倍に膨らむ。
 年金改革は、これを十分に視野に入れて考えねばならない。
 全額税方式は、現行制度からの移行にも、大きな困難を伴う。
 現行制度で保険料を払っている20〜60歳が不公平感なく移行し終えるには、40年もかかる。移行期間を短縮しようとすれば、それに応じて不公平が生じる。過程が複雑で、これまで以上の制度不信につながる懸念をぬぐえない。
 ◆社会保障税で財源確保◆
 厚生労働省の推計では、07年度に約30兆円だった社会保障の公費負担は、15年度になると41兆円まで増大する見通しだ。
 経済成長を持続すれば、税収が増えて社会保障費用の多くは賄える、との主張もあるが楽観的に過ぎる。景気には波があり、現実に暗雲が漂い始めた。社会保障の将来を税収の自然増に託すことは無責任だ。
 消費税を「社会保障税」に替えて、目的税化することで、税率引き上げについて国民の理解を得るべきである。
 食料品など生活必需品の税率は5%に据え置く。他の品目に適用する標準税率は、読売新聞が提言する年金改革案に医療・介護の改善や充実、少子化対策の費用を考え合わせると10%になる。
 また、少子高齢化のさらなる進行を見据えれば、標準税率はいずれ、欧州の最低水準である15%程度を検討する必要があろう。
 高齢化それ自体は憂うべきものではない。多くの人が長寿であることは本来、喜ばしいはずだ。
 にもかかわらず、超高齢社会が暗いイメージで語られるのはなぜか。社会保障の財源負担の在り方が、時代状況に対応していないからである。
 現行制度は、現役世代の負担に頼り過ぎている。超少子高齢時代に、社会保障を現行水準で維持しようとすれば、支える側は耐えきれまい。
 全世代が広く薄く、福祉財源を負担し合う仕組みを確立する必要があろう。子や孫の世代が悲鳴を上げ、その姿を見て高齢者は長生きしたことを嘆く――。そんな社会にしてはならない。


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