公認会計士への途

金融商品取引法 改正を市場強化につなげよ
 不良債権問題などバブルの後始末に追われる間に、日本の金融機関は国際競争力を失い、金融市場の地位も低下した。再生を急ぐ必要がある。
 政府は、金融商品取引法改正案を国会に提出した。改正の柱の一つは、市場で取引できる商品の種類や、取引への参加者を増やし、内外の資金を呼び込むための制度改革だ。
 海外企業や新興企業が簡素な情報開示で上場できる「プロ向け市場」を創設する。個人投資家にも人気の上場投資信託ETF)の投資対象を、貴金属など商品にも広げ、品ぞろえを豊富にする。
 もう一つの柱は、金融機関の業務規制の緩和だ。銀行などが新しいビジネスを手がけやすくし、競争力を強化する狙いがある。
 銀行と証券会社の役職員の兼職や、顧客情報共有についての規制を緩める。銀行による事業会社株の保有制限も一部、緩和する。銀行や保険会社本体による温室効果ガスの排出量取引を解禁する。
 人口減の下で、日本経済が活力を維持していくには、1500兆円に及ぶ個人金融資産や、産油国など海外の投資マネーを、最大限に活用していく必要がある。
 東京市場の魅力を増して資金流入を促し、競争力ある金融機関が、資金を必要とする産業部門に効率的に供給する。法改正を、そんな金融の機能強化につなげたい。
 規制緩和の恩恵を受ける金融機関は、自由度が増すのに応じて、自己規律を高める必要がある。
 銀行と証券会社が顧客情報を共有すれば、銀行の融資回収のために、証券子会社を通じて企業に本来は不要な増資をさせるなど、顧客の利益を害するケースが生じる恐れも指摘される。
 改正法案は、こうした弊害を防ぐため、金融機関に内部管理体制の強化を求めている。グループ全体の取引をチェックし、不適切な取引を未然に防ぐための専門部署を設けるなど、各金融機関は真剣に取り組まねばならない。
 市場の拡大を目指すには、公正さの確保も欠かせない。改正法案には、不公正な取引に対する課徴金の強化も盛り込まれた。
 課徴金額は、不当に得た利益の額に比べ低すぎると指摘されてきた。計算方法を改めることで、例えばインサイダー取引の場合で、概(おおむ)ね従来の2倍になるという。
 これで十分かどうか。不正を抑止するには、より制裁色の強い水準に引き上げるべきだとの意見もある。法案審議を通じて、さらに検討すべき課題だ。