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無料電話「スカイプ」と組むKDDIのそろばん勘定
 KDDIは18日、2010年秋から11年春商戦向け携帯電話の新機種を発表した。スマートフォンでは米グーグルの携帯電話向けOS「Android(アンドロイド)」搭載の3機種を追加し、10月4日に予告していた「禁断のアプリ」の正体も明らかにした。
 禁断のアプリは大方の予想通り、インターネット電話ソフト「Skype(スカイプ)」だった。発表会見の冒頭、KDDI次期社長である田中孝司専務は「ワクワク感をキーワードに本気のauを見せていく」と語り、スカイプ・テクノロジーズルクセンブルク)との戦略提携も発表した。
 スカイプは確かに無料で通話ができ、音声通話収入を柱とする携帯電話会社にとっては「禁断」といえるアプリだ。スマートフォンで他社に大きく出遅れたKDDIにとって、これは「窮余の一策」なのだろうか。
いずれ音声通話は無料になる
 今回のスカイプ導入にあたり、KDDIは相当な検討を重ねてきたようだ。そのうえで採用に踏み切ったのは、収益にマイナスになるどころか、他社に先駆けて導入することが大きなプラスになるとの読みがあったからだ。
 今後数年の業界トレンドを見たとき、音声通話収入が減っていくことはまず間違いない。次世代通信サービス「LTE」が始まっても、当面は既存の3G(第3世代携帯電話)ネットワークによる音声通話サービスが継続されるが、いずれ音声通話はすべてIP(インターネット・プロトコル)化され、データとして運ぶことになる。「30秒何円」といった料金体系は早晩なくなり、定額使い放題で通話できる時代がくるのは時間の問題だ。そうであれば、いち早く無料サービスを提供し、しかも世界で1億2400万人のアクティブユーザーを抱えるスカイプを戦略パートナーとして迎え入れるほうが得策になる。
 すでにスカイプは07年10月から英通信会社3UKに、10年3月末から米ベライゾン・ワイヤレスにそれぞれモバイル向けのサービスを提供している。KDDIが導入を決めた時点ではまだベライゾン向けのサービスは始まってなかったもようだが、3UKの場合、スカイプ利用者の62%は新規契約、しかも一般的なユーザーに比べて20%近くARPU(一人当たり月額利用料)が高いという実績を出している。無料通話のスカイプ目当てで加入したが、実際はスカイプ以外の有料通話も一般ユーザーより17%多く使っているとのデータもある。つまり、スカイプの導入で他社から優良顧客を獲得する効果を上げているわけだ。
ターゲットはiPhoneユーザー
 KDDIの増田和彦コンシューマ事業本部サービス・プロダクト企画本部長は発表会見で、「スカイプの利用は家族、恋人よりも友人・知人を相手に通話やチャットをすることが圧倒に多い」と語った。
 すでにKDDIは、家族向けには「家族割」と「誰でも割」という割引サービスの組み合わせで家族間の通話を24時間無料にしている。また恋人向けであれば、指定した3件までのauユーザーあて通話が24時間無料になる「ガンガントーク(指定通話定額)」がある。あとは、多数の友人・知人向け24時間無料通話サービスが提供できていなかったわけだが、スカイプの採用でそれが実現することになる。
 友人・知人向けの24時間無料通話はすなわち、会社更生手続き中のPHS会社ウィルコムが最大の武器にしていたサービスである。ウィルコムは10月14日、ソフトバンクの100%子会社として支援を受けると発表されたばかりだが、KDDIスカイプ導入でウィルコムの377万契約ユーザーを狙い打ちにできるかたちになる。当然、夜21時から深夜1時までは有料となるソフトバンクモバイルの「ホワイトプラン」にとっても脅威になるだろう。
 特にKDDIのターゲットになりそうなのが、ソフトバンクモバイルが販売するアップルのスマートフォン「iPhone」のユーザーだ。スカイプはすでにiPhone向けにスカイプアプリを配布している。KDDIスカイプアプリからiPhoneのスカイプに発信すると、KDDIは通話料収入が得られなくなる一方で、ソフトバンクモバイルに接続料を支払う必要もなくなる。
 逆にソフトバンクモバイルのユーザーがiPhoneのスカイプアプリでKDDIスカイプに発信すると、ソフトバンクモバイル側はユーザーから通話料収入が得られなくなる。KDDIも接続料収入を受け取れない。
 しかしKDDIにとっては、スカイプで先進的なイメージを市場に植え付け、優良顧客を獲得しつつ、結果としてソフトバンクモバイルへの接続料支払いを少なくできる利点がある。KDDIも収入減になる点では同じだが、ソフトバンクモバイルホワイトプランは他社からの接続料収入がビジネスモデルの根幹を支えている。KDDIはそこを攻める格好になる。
料金プラン、3つの仮説
 KDDIはアンドロイド搭載のスマートフォンを皮切りに、11年には一般的な携帯電話端末にも「BREWアプリ」としてスカイプを搭載する計画だ。いくら優良顧客を取り込めるからといっても、ほとんどのユーザーがスカイプを使うようになれば、収入が減るのは目に見えている。収益のマイナスにならない「仕掛け」がどこかに隠れているはずだ。
 田中専務は料金について、「詳細はいまは話せない。しかし、スカイプは無料のサービスが前提だ。全部が無料にはならないが、無料のコンセプトは守る」と語っている。このコメントから、いくつかスカイプの料金プランが推測できる。
 まず1つめが「基本料を取る」パターンだ。例えば「ガンガントーク2」といった名称で、月額390円もしくは980円程度のスカイプ通話用の基本料を徴収する。基本料金さえ払えばあとは無料で通話できるというプランだ。これなら、わずかながらではあるが収入は確保できる。しかし、無料通話で毎日長時間話されてしまうとかなりの打撃になる。
 2つめの推測は、無料通話の合計時間に上限を設けるという方法。スカイプで無料で話せる代わりに1カ月あたりの通話分数に制限を設ける。これにはいたずらに無料通話をされないよう予防線を張る意味がある。だが、こんなプランではユーザーが満足して使うとは思えない。
従来並みARPUを確保するには
 3つめが最も可能性が高そうな料金設定だ。それは、既存の料金プランのうち比較的高額なタイプを契約しているユーザーだけがスカイプを無制限に使えるというもの。例えば、「プランMシンプル」(月額5250円、誰でも割適用で2625円)を支払えばスカイプを無制限に使えるという仕組みにしておけば、KDDIはある程度の収入を確保できる。KDDIの10年4〜6月期決算における携帯電話事業の音声ARPUは2860円だから、プランMシンプル以上でスカイプを使える条件にすれば、基本料金は誰でも割適用で2625円となり、従来のARPUとほぼ近い水準を確保できる計算になる。
 しかも、プランMシンプルには4252円の無料通話分が付いている。現在はユーザーが無料通話分を使ってもKDDIの収入増にはならず、むしろ他社に接続料を支払ってマイナスになる場合もある。代わりにスカイプを使ってもらえれば無料通話分が消費されず、KDDIにとってメリットとなる。この条件であれば減収要素はかなり少なくなり、無料通話分の繰り越しが増えれば、さらにありがたいはずだ。
 この料金設定であれば、田中専務が会見で語った「音声トラフィックの上にスカイプトラフィックが乗ってくるという見方をしている」という言葉とも合致する。ユーザーにとっては、高めの料金プランで契約しなくてはならないことになるが、スカイプで通話でき、しかも無料通話分が減らないことにはかえってメリットを感じるのではないだろうか。
携帯番号なしでつながるスマートフォン
 今回、KDDIスカイプと包括的な提携関係を結んだ。単にスカイプをアプリで提供するのではなく、スマートフォンのOSに組み込むかたちにし、電話の着信履歴にスカイプでの通話履歴が表示されるような仕組みも施している。ユーザーはいちいちスカイプアプリを立ち上げる必要もなく、また着信時もアプリが起動している必要はない。
 使用する回線もインターネットではなく携帯電話網で接続し、高品質な通話を実現する。しかも、電池の持ちもiPhoneアプリに比べて大幅に改善しているという。
 スカイプの陰に隠れたが、KDDIは今回、アンドロイド搭載スマートフォン向けに「Jibe」というソーシャルメディアにも対応したアドレス帳機能を提供することも発表した。これは、ミニブログの「Twitter(ツイッター)」やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の「mixi」や「Facebook」「au one GREE」など16のサービスをまとめて1つの画面で表示するアプリケーションだ。様々な情報を一元管理して閲覧したり、そこから発信したりもできる。将来はスカイプのアカウントも管理できるようにするという。
 スカイプとJibeが統合されれば、電話番号を知らない友人ともスカイプで音声通話やチャットをし、SNSでつながることが可能になる。増田本部長は「ケータイに革命を起こしたい。モバイルコミュニケーションの新時代が始まる」と語ったが、まさに通信会社であるKDDIが、携帯電話番号なしでコミュニケーションできる環境を進んで構築しようとしている。
 iPhoneに代表されるスマートフォンはこれまで、パソコンのインターネットを扱え、アプリで機能やサービスを追加できる点が新しかった。しかし、KDDIスマートフォンはこれまでの携帯電話による人のつながり、コミュニケーションのスタイルも変えようとしている。
 NTTドコモとソフトバンクモバイルは秋冬商戦モデルを11月に入ったころに発表すると見られる。一方、一足先に発表したKDDIは、さらに10月29日にデザイン性を追求した「iida」ブランドのスマートフォンのコンセプトを発表する予定だ。「ワクワク感に本気で取り組むau」の逆襲は、どうやら始まったばかりのようだ。



携帯にゲーム・クイズなど配信 リクルートが新会社
 リクルートは18日、携帯電話や高機能携帯電話(スマートフォン)向けに、ゲームやクイズなど応用ソフト(アプリ)を配信する新会社を11月1日に全額出資で設立すると発表した。社内のソフト開発者30人以上を新会社に異動させるほか、外部から人材を登用。利用が伸びている交流サイト(SNS)やスマートフォン向けのアプリ開発に本腰を入れる。利用者からの課金を新たな収益源に育てる。
 新会社はニジボックス。資本金1億円、開発者50人体制で2011年1月から本格的に事業を始める。リクルートが提供する携帯サイトやSNS向けアプリなど30種類を引き継ぐ。さらに初年度に150、3年後に1000のアプリなどを新たに開発、提供する計画だ。
 開発を効率化するノウハウを蓄積したため、大量のアプリ配信が可能という。米SNS大手のフェースブックなどを通じ、海外向けのアプリ配信にも注力する。5年後に新会社単体で100億円の売り上げを目指す。