公認会計士への途

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国際会計基準、採用検討へ 100カ国以上導入済み
 欧州を中心に100カ国以上が採用している国際会計基準の導入について、金融庁は23日から企業会計審議会(長官の諮問機関)で本格議論に入る。先進国の中で独自の基準を持つ日本と米国のうち、米国が2014年からの採用方針を打ち出し、日本が孤立する恐れがあるからだ。金融危機を受け、国際基準の時価会計見直しが並行して進んでおり、議論の行方が注目される。
 国際会計基準は各国でバラツキのある会計基準を統一しようと、欧州がルールづくりを主導し、急成長を遂げるインドに加え、韓国やカナダも11年からの採用を予定するなど、世界的な標準になっている。日本と米国は国内基準を維持する立場だったが、米国が今年8月に一転、国際会計基準の採用を表明し、先進国の中では日本が取り残された格好になっている。
 金融庁は、日本経団連日本公認会計士協会などの意向を受け、非公式の意見交換から企業会計審議会での議論に切り替え、本格議論に着手する。審議会では、対象企業や、海外進出している大手企業を対象に国際会計基準の先行導入を行うといったロードマップ(行程表)整備を進める。
 野村証券金融経済研究所の野村嘉浩・投資調査部次長は「投資家は財務状況の比較がしやすくなり、企業にとってはM&A(企業の合併・買収)で相手の状況が分かりやすくなる」と世界的に採用される国際会計基準のメリットを強調する。
 金融庁の議論では11年以降の導入が検討される見通しだが、企業は会計処理やシステム変更などの対応が必要になり、会計専門家は「企業の事務体制や人材育成など5年ぐらいの準備期間が必要」としている。
 一方、金融市場の混乱を受けて、海外では国際会計基準時価評価を一部凍結する動きがあり、日本も追随する見通し。このため、市場関係者からは、混乱の可能性も指摘する声も出ている。
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【予報図】
 ■企業へ活力与える制度に
 国際会計基準の導入が決まれば、日本企業は海外でも国内と同じ基準で作成した財務情報を開示でき、手間やコストを削減できる。見慣れている国際基準によって、海外投資家が日本企業の財務状況を確認できるようになり、海外での資金調達がしやすくなるメリットもある。
 また、これまでは、欧州主導で進む国際会計基準のルールづくりに日本の意見が反映されにくく、日本企業に不利な改正を止められないケースもあったが、導入後は制度設計の議論に積極的に参加できるようになると期待される。
 ただ、国際会計基準は、日本の商慣行が反映されない部分があり、経常利益やのれん代などで、会計の概念が大きく変わる。事務経費を注ぎ込むことのできない中小企業にとっては、人材育成やシステム変更の負担が経営の圧迫要素になりかねない。非上場企業や、海外展開をしない企業にとっては、メリットも少ない。
 つまり、国際会計基準の必要性は、事業形態によってまちまちだ。金融庁で行われてきた日本経団連日本公認会計士協会などとの意見交換でも、一律の強制採用に対しては異論が出ているという。
 産業界全体を底上げするような対象企業の設定が必要で、そうなれば、国際会計基準の導入は、日本企業の活力につながる。


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