公認会計士への途

監査法人が不正対策業務に本腰  4月に金融商品取引法の内部統制(日本版SOX法)が本格施行されるのを控え、監査法人大手が、不正対策・係争サポート事業に本腰を入れ始めた。提携先の米国の大手監査法人などからノウハウを導入、専門部署を拡大、強化する動きが相次いでいる。
 不正対策・係争サポート事業は、汚職や資産の不正流用、財務諸表の粉飾など幅広いリスクを対象に、不祥事を減らすための内部統制ルールの整備・運用支援に加え、社員に対する研修制度や不正のダメージ評価、もしも不正が見つかった場合の社内の調査、会社の資産保全などをトータルで支援する。
 特に、米国のエンロンワールドコム事件以降、会計上の不正が大きな問題となっており、米大手監査法人が世界レベルで不正防止ビジネスに乗り出している。
 国内では、従来は監査関連サービスとして部分的に行われてきたが、2005年ごろから徐々に専門的に行う監査法人が出始めた。その後、相次いで発覚した偽装問題などで企業の不正が売り上げやイメージの下落に始まり、直接、間接的に企業価値を大きく損なうことが企業経営者に浸透。国内の大手監査法人でも、監視プログラムやデータ解析ツールなどで先行している米国のノウハウを導入し、専門化を図っている。
 4月から日本版SOX法が施行されるのを控え流れが加速。新日本監査法人が提携先の米アーンスト&ヤングの協力を得てこのほど「FIDS(不正対策・係争サポート)部」を立ち上げた。
 先行するデロイト・トーマツFASでも、会計士やコンサルタント検察庁経験者などの専門家によるチームを、従来の10人から倍増させる計画だ。現在は年間40件程度の受注にとどまっているが、2010年には年間150件、10億円程度に伸びるとみている。
 ただ、「人間のやることであり、不正を完全に防止するのは不可能」(新日本監査法人)。同社でさえ、昨年まで職員だった会計士が在職中にインサイダー取引を行っていた不祥事が発覚した。監査法人には不正対策ビジネスの実践が求められているともいえそうだ。