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ドコモとサムスン電子書籍で提携 ソニーKDDI連合も
iPad追撃 端末や回線一括提供
 電機、通信各社は相次ぎ電子書籍型端末を実用化する。韓国サムスン電子はNTTドコモと組み年度内に日本市場に進出するほか、ソニーKDDIと組んで参入を検討している。端末と回線、書籍などコンテンツ配信の仕組みをセットにして家電量販店や携帯電話ショップで販売する。ソフトバンクモバイルが扱う米アップルの多機能端末「iPad」に対抗、競争激化で普及に弾みが付きそうだ。
 サムスン電子が年度内にも発売する「ギャラクシータブ」(画面サイズは7型)はアイパッドと同様の多機能端末。米グーグルの基本ソフト(OS)アンドロイドを搭載しており、書籍だけでなく専用サイトから様々なアプリケーションソフトもダウンロードしてパソコン並みの機能が利用できる。
 サムスンはNTTドコモが大日本印刷と始める電子書籍の配信サービスと連動する計画で、携帯電話回線を通じて約10万のコンテンツを利用できる見通しだ。
 ソニー電子書籍型端末「リーダー」を年内に発売する予定。KDDIなどと開設するサイトを通じてコンテンツを配信する。東芝電子書籍にも使える新型の多機能端末を年度内に日本市場に投入する。同社の組む通信会社は決まっていない。
 電子書籍型端末ではソフトバンクが「アイパッド」に携帯電話回線を搭載したモデルを販売し、月額制で雑誌などを配信するサービス「ビューン」を始めた。米アマゾン・ドット・コム電子書籍専用端末「キンドル」を年内にも日本で発売する予定。日本の電機メーカーも端末開発を急いでいた。内外各社の競争で機能やコンテンツの充実が進むとみられる。
 調査会社によると電子書籍事業の市場規模は約600億円で、2014年度には1300億円を超える見通し。携帯電話業界では、まずドコモが12月から光回線並みの通信速度を実現する次世代サービスを開始する予定。携帯電話サービスの高速化とコンテンツの充実により市場がさらに拡大する見通しだ。



日立ディスプレイズ、タッチパネルの厚さ3割減 液晶パネルと一体化、来年後半に量産開始
 中小型液晶パネル大手の日立ディスプレイズ(DP)は24日、タッチパネルと液晶パネルを一体化した新型ディスプレー=写真=を開発したと発表した。従来品に比べて厚みを約30%減らした。2011年後半に量産を開始する予定で、薄型、軽量化が進む携帯電話やスマートフォン(多機能型携帯電話)などでの需要を見込んでいる。
 新型ディスプレーは厚みを1.5ミリメートル以下に薄くできる。従来品では0.5ミリメートル程度だったタッチパネル部分の厚みを0.1ミリメートル程度まで薄くした。通常は独立して組み込む液晶パネルとタッチパネルを一体化することで部品を減らした。
 タッチパネルが薄いと誤作動の原因となるノイズが発生しやすい。しかしノイズを抑える独自の機構を開発、ディスプレーに触れた際の検出誤差を±1ミリメートル以下にした。



フジテレビ 豊田社長 「競合」ネット関連の広告収入急増
 テレビ広告について「新しい産業に支えられている」と話すのはフジテレビジョン豊田皓社長。24日の記者会見で高機能携帯電話や交流サイトなどインターネット関連の広告収入が急増していることを明らかにした。テレビ視聴時間を奪う新興勢力に支えられる皮肉な構図ともいえる。だが、「視聴者のテレビ接触時間も伸びている」と競合を懸念する様子は見せない。
 広告収入は4〜9月期に前年同期を上回るなど回復基調。今後の不安はネット業界など新興勢力の台頭より円高による企業収益の悪化だ。日本経済について「少しずつ自律的な回復軌道に入っていた」とみていただけに「円高には警戒が必要」と話す口調はうらめしげだ。



電子部品景況、減速感強まる 7〜9月「悪化」3割に、新興国需要の鈍化響く
 日本経済新聞社が電子部品や関連製造装置メーカーなど30社を対象に実施した「電子部品景況調査」によると、足元の7〜9月期の景況感について聞いたところ、4〜6月に比べて「悪化する」と回答した企業が3分の1を占めた。リーマン・ショック前の2008年7〜9月に実施した調査に比べても8ポイント増えており、電子部品市況の減速感が鮮明となった。
 7〜9月期は例年、年末商戦に向けたデジタル機器や家電などに組み込む部品の受注が最盛期を迎えるが、欧米景気の悪化や新興国需要が減速したことを受け各社とも慎重な姿勢を強めている。
 3カ月前に実施した前回の調査では、7〜9月の景況感の見通しについて「悪化する」との回答はなかった。高機能携帯電話(スマートフォン)は好調だが、パソコンや液晶テレビ向けが変調を来しているとの見方が多い。「6月まではメーカーに納入する部品の生産が追いつかないケースがあったが、7月以降減速し始めた」(大手電子部品)
 10〜12月の次期の見通しについては、「良くなる」と回答した企業は3割弱。足元の7〜9月に比べて1割程度上回る。



企業の銀行借り入れ低迷 3年ぶり低水準
6月末371兆円 銀行融資枠契約も減少 7月末
 企業の銀行借り入れが縮小している。日銀の統計によると、企業の銀行借り入れは6月末時点で371兆円余りと3月末から約7兆円減少。2007年6月以来3年ぶりの低水準となった。銀行融資枠(コミットメントライン)も7月末時点で契約社数が6年ぶりの低水準となり、利用額も落ち込んでいる。国内景気の停滞で設備投資などへの資金需要が後退。すでに潤沢な手元資金を持つ企業が多いほか、金融危機が一段落して社債など他の手段で調達しやすくなっているのが背景だ。
 日銀の資金循環統計によると、金融を除く法人企業の金融機関(政府系などを含む)からの借り入れ残高は6月末で371兆1889億円。減少は2四半期連続で、直近のピークだった08年12月(404兆8814億円)からは34兆円近く、約8%減った。
 一方、必要な資金を機動的に手当てする銀行融資枠の利用も滞りがちだ。日銀の調べでは、7月末の融資枠の契約社数は7417社と、6年ぶりの低水準となった。契約額ベースでも6月に24兆447億円とほぼ3年ぶりの水準まで減少した。実際に融資枠を利用して資金を借り入れている企業数は7月に2776社、2兆8918億円と、金融危機が一服した09年度後半以降、社数、金額ともに減少傾向が続いている。
 企業の銀行借り入れが縮小しているのは、設備投資など前向きな資金需要が乏しく、調達ニーズそのものも後退しているのが大きい。財務省の法人企業統計によると4〜6月期の設備投資は前年同期比1.7%減で、13期連続減少となった。
 国内銀行の8月の貸出残高(月中平均)は前年同月比2.0%減の394兆2030億円で、9カ月連続の減少となった。企業の運転資金や設備投資などに絡む資金需要が引き続き弱めで推移しているためで、とくに大手銀行は3.9%減の200兆7551億円と10カ月連続で減っている。
 金融危機の影響が一服していることも背景だ。08年9月のリーマン・ショックをきっかけとした金融危機で、社債コマーシャルペーパー(CP)など資本市場で資金を調達しづらくなった企業は、融資枠の設定を含め銀行借り入れへの依存度を高めた。融資枠では08年12月に利用額が過去最高の6兆471億円に達した。しかし、その後は次第に金融市場の機能が回復。足元ではBBB(トリプルB)格など相対的に格付けが低い企業でも社債が発行できるようになってきた。
 また企業の手元資金に余剰感が生じている面もある。金融危機の再燃に備えて「企業が手元資金を厚めに積む動きが続いている」(日銀金融機構局)との指摘がある一方、設備など振り向け先も乏しく、企業全体として資金が積み上がる図式だ。実質預金(手形や小切手を除き、譲渡性預金を含む)は2.7%増の544兆3243億円となり、07年5月以降、40カ月連続で増加している。潤沢な手元資金でむしろ金融機関への返済を進める動きもある。



レアアースの輸入停滞 中国依存リスク鮮明 日本勢、調達先拡大や使用量抑制を模索
 ハイブリッド車などに使われるレアアース(希土類)の中国からの輸入が滞ったことは、収益や原料調達など多くの面で中国に頼り過ぎるリスクを改めて示した。尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件をきっかけとした日中間の溝が修復の方向へ向かうとしても、日本企業には中国への過度の依存を減らす戦略が必要になりそうだ。
 24日の東京株式市場では、信越化学工業などレアアースを原材料に使う企業の株価が下がった。「対日輸出が全面禁止になれば在庫が払底し影響が拡大するとの思惑が広がった」(市場関係者)
 自動車や電機大手も対応に追われた。トヨタ自動車ハイブリッド車に使われる部品について、レアアースの調達ルートや在庫量などを改めて調査し始めた。今のところ6カ月は生産に影響がない見込みだ。日立製作所は「中国からの供給が減るリスクを見越し、数年前から在庫を増やしてきた」。供給が一時的に途絶えてもすぐには生産に影響は出ないという。
 「今回の混乱は短期間にとどまる」(専門商社)との見方は多いが、今後も需給の逼迫(ひっぱく)で価格が上昇する可能性がある。中国政府が輸出許可枠を前年比で4割減らすと決めた7月以降、価格は軒並み高騰。磁石原料のネオジムやジスプロシウムは昨年末の2〜3倍、セリウムは5倍以上だ。
 「(レアアースを使う)電気自動車産業を発展させたい中国からの調達は将来も困難になるかもしれない」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の松本寿投資アナリスト)との声もある。
 双日豊田通商と組み、ベトナムで鉱山開発の調査を進めるなどの対策も始まった。TDKはモーターの基幹部品である磁石で、使用量を減らす技術を開発。トヨタハイブリッド車部品のリサイクルも検討しているが、いずれも短期間に効果を上げるのは難しいのが現状だ。



生産・投資、他国シフトも
 産業界では人件費の上昇などを受け、生産の中国一極集中を是正する傾向が出はじめている。日中間のモノや人の動きを縛るような状況が続けば、小売りのような内需型の企業を含め、中国とのビジネスを見直す動きも広がりそうだ。
 中国を中心に投資を続けてきた船井電機はタイ工場を大幅に増強する。ファーストリテイリングバングラデシュなどでの生産を拡大する。いずれも人件費上昇などのリスクを抑える戦略だ。
 中国内での自由な事業活動が滞れば、この傾向に拍車がかかる可能性がある。ゼネコンのフジタの社員が中国当局に身柄を拘束されたのを受け、清水建設は24日、渡航予定者に軍事施設に近づく際の注意事項などを通達した。
 観光・小売業にも影響が出そうだ。中国国家観光局は東京ビッグサイト(東京・江東)で開幕した「世界旅行博2010」への出展を見送った。日本旅行業協会の金井耿会長(日本旅行会長)は同日の記者会見で「秋や年末の観光ツアー販売に多少の影響が出るだろう」と述べた。
 全日本空輸によると、9月中旬から24日までの実績と10月中旬までの予約を合わせると、中国路線の団体旅行客で約2500人分のキャンセルが発生しているという。中国人観光客の需要取り込みを加速してきた小売業界などにも中国リスクへの意識が強まりそうだ。



いらだつ首相「超法規的措置は取れないのか」
 「『超法規的措置』は、取れないのか」
 22日の訪米を控えた菅首相は、周囲にいらだちをぶつけた。沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で、中国の対抗措置の報告が次々に上がってきていた。
 首相は「民主党には(中国で副首相級の)戴秉国(たいへいこく)(国務委員)と話せるやつもいない。だからこういうことになるんだ」とこぼした、と関係者は語る。
 首相とその周辺が中国人船長の扱いをめぐる「落としどころ」を本気で探り始めたのは、船長の拘置期限が延長された19日以降のことだ。この日を境に中国政府は、日本人4人を拘束し、レアアース(希土類)の対日輸出禁止の動きに出るなど、本格的な「報復カード」を相次いで切った。
 実際に「船長釈放」に動いたのは、仙谷官房長官と前原外相だったとされる。
 23日朝、ニューヨーク。日中関係の行方を懸念するクリントン国務長官と向かい合った前原外相は、こう自信ありげに伝えた。
 「まもなく解決しますから」
 那覇地検が船長を釈放すると発表したのは、その半日余り後の日本時間24日午後2時半だった。東京・霞が関海上保安庁に、寝耳に水の一報が入ったのは、そのわずか10分ほど前。
 「戦争になるよりはいい。このまま行けば、駐日大使の引き揚げ、国交断絶もありえた」――。首相に近い政府筋は24日夜、船長釈放に政治判断が動いたことを、周囲に苦しげに認めた。
 「那覇地検の判断なので、それを了としたい」
 仙谷官房長官は24日夕の記者会見で、ひたすら「地検の判断」を繰り返し、政治の介入を否定した。
 柳田法相もこの後すぐ、法務省で記者団を前に「法相として検察庁法14条に基づく指揮権を行使した事実はない」とのコメントを読み上げた。質問は一切受けつけなかった。
 だが、こうした弁明は、世間には通用したとはとても言えない。首相官邸には直後から「弱腰だ」といった抗議電話が殺到。官邸職員は対応に追われた。
 民主党代表選での再選、内閣改造・党役員人事を経て、ようやく本格的な政権運営に着手したばかりの菅首相。「中国に譲歩した」と見られて再び世論の支持を失う失態は、できれば避けたかった。
 首相がそれでも「政治決断」を選択したのは、中国の反発の強さが当初の予想を超えていたためだ。
 19日の拘置延長決定後、中国は、20日に日本人4人を拘束、21日にはレアアース(希土類)の対日禁輸に踏み切るなど、たたみかけるように「対抗措置」を取った。日本側はこれらを公表しなかった。だが、ニューヨークにいた温家宝首相は21日夜(日本時間22日朝)、在米中国人約400人が出席する会合で、船長釈放を要求する異例の動きに出た。これが、官邸内に広がりつつあった「このままではまずい」という思いを、政府の共通認識にまで押し上げるきっかけとなった。
 「あそこまで強硬にやるとは……。海上保安庁の船長逮捕の方針にゴーサインを出した時、甘く見ていたかもしれない」。政府関係者は、そもそも「初動」に判断ミスがあった、と苦々しげに振り返る。
 菅政権の政治判断の背景には、郵便不正事件をめぐって大阪地検特捜部の主任検事が最高検に証拠隠滅容疑で21日に逮捕されたことで検察の威信が低下し、「今なら検察も言うことをきくだろう」との思惑が働いていたとの見方がある。
 実際、船長以外の船員と船を中国に帰すにあたっては、「外務省が検察にかなり強く働きかけていた」と証言する日中関係筋もいる。
 検察幹部も「外務省から、起訴した場合の日中関係への影響などについて意見を求めた」と話し、双方で早い段階からやりとりをしていたことがわかる。その際、起訴に向けた表立った異論はそうなかったとみられる。政府内に「迷い」が生じたのは、やはり19日に船長の拘置延長が決まった後だったようだ。
 船長釈放は、結果として日米首脳会談直後というタイミングになった。このため、「米国からこれ以上の日中関係悪化について、いいかげんにしろ、と圧力がかかったのでは」との指摘すら出ている。
 政府・民主党内でも、官邸の判断に対する評価は分かれる。「中国ではスパイ容疑は最悪、死刑が適用される。4人の人命がかかっていた」との危機感から理解を示す声がある一方、「レアアース問題は、世界貿易機関WTO)に提訴すれば中国は負ける。ごり押しすれば勝てる、と中国にまた思わせただけだ」といった批判も多い。
 「菅も仙谷も、外交なんて全くの門外漢だ。恫喝(どうかつ)され、慌てふためいて釈放しただけ。中国は、日本は脅せば譲る、とまた自信を持って無理難題を言う。他のアジアの国々もがっかりする」。党幹部はうめいた。



【産経主張】中国人船長釈放 どこまで国を貶(おとし)めるのか
 ■主権放棄した政権の責任問う
 日本が中国の圧力に屈した。千載に禍根を残す致命的な誤りを犯したと言わざるを得ない。
 沖縄・尖閣諸島石垣市)沖の日本領海を侵犯した中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突し、公務執行妨害の疑いで逮捕、送検されていた中国人船長を那覇地検が処分保留のまま釈放することを決めた。勾留(こうりゅう)期限まで5日残しており、法の手続きを無視した事実上の超法規的措置といえる。
 釈放にあたり、那覇地検次席検事は記者会見で「わが国国民への影響や今後の日中関係を考慮した」と説明した。法に基づき事件を厳正に処理すべき検察当局が「外交上の配慮」を述べるとはどういうことか。
 菅直人首相、前原誠司外相の外交トップが外遊で不在の中、仙谷由人官房長官は地検独自の判断との立場を強調した。しかし、日本の国益と領土・主権の保全、対中外交のあり方や国民感情などを考慮しても到底納得できない。釈放により、今後日本が尖閣周辺で領海侵犯や違法操業を摘発するのは極めて困難となる。主権放棄に等しい責任について首相や官房長官は国民にどう説明するのか。
 船長は容疑を否認しているが、海保側は漁船が衝突してきた状況を撮影、故意であるのは立証できるとしている。それならばなおさら起訴し、公判でビデオを公開して罪状を明らかにすべきだった。検察当局が船長に「計画性はなかった」と判断し、処分保留とはいえ釈放したことは事実上、刑事訴追の断念を意味する。国際社会も日本が中国の圧力に屈したと判断する。これほどのあしき前例はなく、その影響は計り知れない。
 ◆むなしい日米首脳会談
 那覇地検の決定は、ニューヨークで行われた日米首脳会談、日米外相会談の内容ともそぐわず、いかにも唐突で無原則な印象を国際社会に与えよう。
 菅首相オバマ米大統領の首脳会談では、衝突事件を念頭に日米の連携と同盟の強化で一致した。米政府は「西太平洋の海洋問題で緊密に協議していくことで合意した」と発表、中国の海軍力増強と海洋進出に日米で共同対処する姿勢を明示したばかりだ。
 これに先立つ外相会談でも、前原外相にクリントン国務長官尖閣諸島には「日米安保条約が適用される」と言明したという。前原氏は主要国(G8)外相会合でも「日本は冷静に対処している」と船長逮捕の正当性を強調して各国に理解を求めており、今回の決定はこの点でもちぐはぐといわざるを得ない。
 尖閣諸島は日本が明治時代に他国が領有権を主張していないことを確認した上で領土に編入した。中国が領有権を主張し始めたのは東シナ海の石油・天然ガス資源が明らかになった1970年代にすぎない。1953年の人民日報には、「尖閣諸島は沖縄の一部」との記述もあるほどだ。
 ◆尖閣領有の意思明示を
 にもかかわらず、中国政府は事件発生以来、船長逮捕を不当として即時無条件釈放を要求し続け、閣僚級の交流停止、東シナ海のガス田共同開発条約交渉中止などの対抗措置を次々と打ち出した。ハイテク製品の生産に欠かせないレアアース(希土類)の日本向け輸出を事実上禁止した。
 さらに、中国当局は旧日本軍の遺棄化学兵器処理事業に関連して中国河北省の現場で事前録画を行っていた日本の建設会社関係者4人を「許可なく軍事管理区域に入った」との理由で拘束、取り調べていることも判明した。異様な対日圧力である。
 事件を「国内法にのっとって厳正に対処する」(菅首相)としてきたのが結局腰砕けに終わったことで、中国側は「中国外交の勝利」と宣伝し、日本への対抗措置を徐々に解除する可能性があるが、日本の主権と国益が大きく貶(おとし)められ、取り返しがつかない。
 海上保安庁などによれば、尖閣諸島海域には1日平均270隻もの中国漁船が現れ、その4分の1以上が日本領海内で違法操業中だという。処分保留によって中国側は一層強い姿勢に転じ、漁船に加えて、「安全操業」の名目で武装した漁業監視船も同行させる恫喝(どうかつ)的操業が一般化しよう。
 そうした事態を阻止するには、尖閣諸島の領有の意思を明確な態度で示す必要がある。ヘリポート建設なども含め、自衛隊部隊配備も念頭に検討を急ぐべきだ。