(#゜Д゜)/新聞

(世界を語る)経済成長、だれが担う 米中心、秩序変わらず  マサチューセッツ工科大名誉教授 レスター・サロー氏
 2008年に起きた金融危機の後の世界経済では、米国や日本の景気回復が力強さを欠く一方、中国がいち早く高い成長軌道に回帰している。この現象は世界の成長のけん引役が日米から中国に交代する兆しとの見方も出てきた。資本主義論で知られるレスター・サロー米マサチューセッツ工科大学(MIT名誉教授に見解を聞いた。
 ――金融危機震源地となった米国の景気はいつごろ力強さを回復するでしょうか。
 「景気回復にはV字型とU字型がある。今回はU字型だ。2〜3年間底をはってから回復する」
 「ただ、資本主義には景気後退がつきものだ。第2次世界大戦以降、景気後退は何回あったか。答えは12回。今回の不況は不動産取引が引き金だったが、何が次の不況を引き起こすかは不明だ。危機の主役となった金融機関にタガをはめる米国の金融規制改革法が成立した。だが、これで次の不況を防げるわけではない。(00年の)IT(情報技術)バブル崩壊後に生まれたITの様々な規制では、今回の不況は防げなかった」
 ――世界の当局者やエコノミストの間で「景気刺激策を続けるか、財政再建が先か」と議論が分かれています。
 「大恐慌の克服法は20世紀最高のエコノミストの一人、ジョン・メイナード・ケインズが教えてくれている。狂ったように紙幣を印刷し、狂ったように景気刺激策を打ち出すことだ。財政赤字を気にする必要はない。需要を創出しすぎることはあり得ない」
 「米造幣局に行くと10万ドル(約870万円)札が飾ってある。米地区連銀間でしか使えないから、盗む人はおらず、誰も警備しない。印刷代は10セント。たった10セントで何年も持つ。紙幣とはそういうものだ。デフレ局面だからインフレの心配は必要もない」
 「ケインズは米上院に『大恐慌を治すなら、国民の半分を雇ってケンタッキー州の陸軍基地の倉庫にある金塊を全土に埋めろ』と助言したことがある。彼らに時給5ドルを支払う。次に残る半分の国民も時給5ドルで雇い、その金を掘り起こさせる。見つけた人は金を自分のものにしていいなら、家には置いておかずにすべて使う。給与の5ドルも消費に回るという理屈だ」
 ――中国は元気です。いずれ米国を抜き、世界一の経済大国になるといわれます。
 「中国の経済成長は今年は年率10%だと言われている。これは怪しい。10%成長は都市部に限った話で、地方に住む9億人はゼロ成長だ。中国全土が10%成長するには、都市部の4億人が33%成長しなければけん引できない。地方を含めれば中国の成長率は3%程度だろう」
 「そのうえで米中経済を比較しよう。08年の中国の1人当たり国内総生産(GDP)は3400ドルだ。米国は4万7千ドル。中国の過去20年の平均成長率が続いても、追いつくには100年かかる。22世紀の話だから、72歳の私には関係ない。21世紀はおおむね今のままの秩序で推移する」
 「米国の成長率が英国を上回り始めたのは1830年。経済規模が英国を上回ったのは第1次大戦後の1919年のことだ。日本は明治維新以降、米国に追いつこうとしているが、いまだに成功していない。世界の経済秩序が変わるには時間がかかる」
 ――インドも急速に経済成長しています。
 「インドは90年代は年率3%、2000年代は年率8%で成長したという。私は信じない。3%が8%に上昇したなら、何かが飛躍的に改善しているはずだ。教育は改善していないし、海外からの直接投資は増えていない。規制緩和は進まず、インフラも良くなっていない。インドが中国に追いつくには2つの方法がある。一生懸命に成長するか、統計数字を変えるかだ」
 「私は米国のGDPの数字は信じる。数字を集計する人間に、大統領によって更迭されない独立性が担保されているからだ。彼をクビにできるのは議会だけ。GDPを集計する人間が大統領や首相に更迭される可能性がある国の統計数字を信じてはならない」
 ――日本の景気対策をどう見ていますか。
 「景気対策が世界で最も下手な国という賞があれば、日本は間違いなく受賞する。日本政府は『輸出が上向いている』というが、輸出依存が続くようなら失われた20年が失われた30年になるだけだ。経済は内需がけん引せねばならない。『失われた30年などあり得ない』という考え方は大きな間違いだ。エジプト経済は4000年間にわたり世界トップだったが、その後の2000年間は成長が止まっている」
 ――なぜ内需が広がらないのでしょうか。
 「イノベーション(技術革新)がないからだ。日本の消費者は米アップルの多機能情報端末『iPad(アイパッド)』のために徹夜で行列するが、ソニー製品のためには並ばない。わくわくするような楽しさがない。日本はまねが得意でここまで追い付いた。追い抜くにはイノベーションが欠かせない。全く新しい発想で未知の分野を切り開くアップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)のような人材が必要だ」
 「イノベーションを生むのは政府ではなく教育だ。大学で教授の言うことを黙って聞いているような学生は使い物にならない。教授の言葉に疑問を呈し、教授が知らないことを発見するような学生がイノベーションを生む」
 ――日本企業は人材を有効に生かしていますか。
 「無駄なことをしている社員が多すぎる。例えば、朝に銀座のデパートに行くと、社員全員が並んでお辞儀をしている。極めて非生産的ではないか。日本に必要なのは新しい企業だ。日本のほとんどの新興企業は、米占領下の第2次大戦直後に生まれた。2000年以降に誕生した企業をいくつ挙げられるか。米国では00年以降に誕生した企業が経済を下支えしている」
 ――お辞儀は日本文化のひとつです。
 「もちろん、どちらの文化が優れていると言っているわけではない。だが、米国文化の方が経済成長に適している。我々は産業主体の経済から知識主体の経済に移っている。ジョブズCEOや(マイクロソフト創業者の)ビル・ゲイツ氏、(ディズニー創業者の)ウォルト・ディズニー氏がつくり出すような知識だ。人々は楽しいものには金を払う。今の日本にあまり楽しいことがない」



証券業界、ツイッターの口コミ効果に期待
 身の回りで起きたことをつぶやきのような140字以内の短文で投稿するインターネットの簡易投稿サイト「ツイッター」に、証券会社が注目している。「つぶやく」内容は、投資セミナーなどのイベント情報や難解なアナリスト分析を分かりやすくした情報が中心だ。
 最初にツイッターに注目したのは、ネット証券のカブドットコム証券。昨年9月から始め、その日のニュースに関連付けた株の銘柄を紹介することもある。狙いについて同社営業推進室の藤本誠之氏は「株を購入する上で“気づき”につながる情報を示したい」と説明する。ネット証券最大手のSBI証券も、ツイッターを「広告」と位置づけ、債券募集の告知やプレスリリースを提供。マネックス証券は7月26日、ツイッターを開設した。
 大手証券も負けていない。大和証券は4月から、東京、ニューヨーク、香港に駐在するアナリストが株式市場や経済動向の最新情報を紹介しており、閲覧者(フォローワー)は6千人を突破している。同社の田中稔介ダイレクト企画部長は「海外に拠点のある大和の特徴を生かした」と明かす。日興コーディアル証券も昨年9月からツイッターを開設した。
 各社が注目するのは、フォローワーが証券各社のツイッターで知った金融商品やイベント情報を、他のツイッターでつぶやくことによる口コミ効果だ。日本証券業協会によると、ツイッターなどインターネットを通じた情報提供は金融商品取引法上の「広告」に当たり、社内に審査担当者を置くなど自主ルールを定めている。
 ただ、ツイッターは普及が始まったばかりで、証券関係者は「複数のフォローワーを介在することで情報が誇大になりかねない」と指摘する。ツイッターは閲覧者との「情報をやりとりする場」であることがメリットだが、返信をしない会社も多い。「日常業務に支障がある」というのが理由だが、ツイッター本来のメリットをどう活用するのも課題となりそうだ。



エコカー補助>9月終了 景気回復に影響も メーカー各社減産検討
 政府は30日、新車購入時の「エコカー補助金」制度を、予定通り9月末に終了することを明らかにした。経済危機後の日本の景気回復はこれらの政策に支えられており、打ち切りを見越した大手自動車メーカーが減産の方針を決めるなど、少なからず景気に影響を及ぼす恐れがある。最近では好調だったアジア向けの輸出の伸びも鈍化する中で、政策に頼らない自律的な回復軌道に向けた試練の時を迎えている。
 「9月から更に何らかの対策が必要な状況ではない」。直嶋正行経済産業相は30日の会見で、エコカー補助金の打ち切りを明らかにした。閣内には景気への配慮から延長を求める声も出ていたが、経産省幹部は「自動車工場の稼働率が5割を切った異常事態を受けた制度」と、経済危機への緊急対応だったことを強調する。
 制度は08年秋のリーマン・ショック後の急激な景気の落ち込みを受けて、当時の麻生政権が昨年4月に策定した経済対策に需要喚起策として盛り込まれた。一定の燃費基準を満たした新車の購入者に最大で25万円を支給。今年3月末に期限を迎えたが、9月末まで延長された。1年半の補助金交付の予算額は5837億円に上り「財政が厳しい中、いつまでも税金を投入するわけにはいかない」(経産省幹部)というのが打ち切りの理由だ。
 国内の新車販売台数は、昨年2月に前年同月比で7割を切る水準まで落ち込んだが、4月からの補助金に加え、エコカー減税の効果もあって同年夏以降は前年を上回る水準に戻った。外需の回復にも後押しされ、30日に発表された10年上半期(1〜6月)の国内生産台数は前年同期比45・8%増と、上半期としては過去最大の伸び率を記録した。
 しかし、今回の制度打ち切りを見越して自動車メーカーは秋以降の販売減を予測。トヨタ自動車は10月の1日当たりの生産台数を、9月の計画より2割減らす方針だ。日産自動車も状況次第で減産を検討する方向で「(制度を打ち切った)各国の状況を見ると大きなインパクトがある」(田川丈二執行役員)とみている。
 同じく需要喚起策として効果を発揮してきたエコカー減税や、家電のエコポイント制度は今後も続くが「既に1年以上たって効果が一巡している」(証券アナリスト)と指摘される。欧州の財政危機の影響などで、景気回復をけん引してきたアジア向け輸出の伸びが鈍化した影響もあり、6月の鉱工業生産指数は4カ月ぶりに低下した。失業率は高止まりを続け、デフレも長期化の様相を示す中で、政策頼みからの脱却を図れるか、日本経済の実力が問われそうだ。
 ◇終了前に補助使うには? 9月30日までに車両登録必要
 補助金は乗用車の場合、一定の燃費基準を満たした新車を購入すれば5万〜25万円が支給される。
 例えば、登録から13年以上使用した車を廃車にしてトヨタ自動車ハイブリッド車(HV)「プリウス」の最廉価モデルを購入する場合、車両価格(205万円)に諸費用などを加えた金額から25万円の補助金を差し引いた188万円程度で購入できる。補助金が打ち切られると約213万円になる。自動車購入の際に上乗せされる自動車重量税自動車取得税計約11万円は、12年春まで継続するエコカー減税により全額免除される。
 エコカー補助金を受け取るには、申請手続きが必要。申請には新車の車検証のコピーなどが求められるため、補助金の終了期限である9月30日までに車両登録を済ませなければならない。登録した上で申請書を日本自動車販売協会連合会(自販連)などに10月29日までに届ける。
 現在でも2カ月半程度の納車待ちが続くプリウスは、今から購入しても登録の前提となる納車が9月末までに「間に合わない」(東京都内の販売店)ため、補助金を受けるのは困難だ。
 また、申請期限までに乗用車向けの政府の予算額約5837億円を超えることが明らかになれば期間内でも申請の受け付けを終える。7月28日時点での申請受付金額は約8割の4721億円に達している。



「ヤフーでググる」新時代へ 検索どう変わる
 「日本のヤフー、グーグルの検索採用」というニュースに「え、どういうこと?」と首をひねった人も多いのではないか。ミニブログツイッター」上では「これからは『ヤフーでググる』って言っていいの?」という困惑気味の書き込みも見られた。そもそも検索エンジンの切り替えとは、ユーザーから見てどういう意味があるのだろうか。
 検索サービスの仕組みは大きく分けて、ウェブサイトを巡回して情報を整理・蓄積するデータベースの部分、大量のデータの中から意味のある検索結果を抽出するための辞書やフィルタリングといった中間処理の部分、そして結果をどのようにユーザーに届けるかというサービス部分の3つから構成される。日本のヤフーが7月27日、米ヤフーのエンジンから乗り換えると発表したのは、この基盤のデータベース部分だ。
 日々増え続ける情報量に対応できる巨大データベースの構築・維持には膨大なコストがかかる。ヤフーはこの部分をグーグルにアウトソーシング(外部委託)し、自らはユーザーに近いサービス部分に専念するというわけだ。
 同じ検索エンジンを使っても、ユーザーから見た検索結果はその中間処理の方法によってずいぶん違ってくる。ヤフーはもともと米ヤフーのエンジンの上に、日本のユーザー向けに検索結果にニュースや画像、地図なども含めて表示するといった中間部分の処理プログラムを作り込んでいる。「goo」や「BIGLOBE」などのポータルサイトもグーグルのエンジンを採用しているが、同じキーワードで検索しても出てくるサイトの種類や順位は微妙に異なっている。
同じエンジンでも「乗り心地」は異なる
 ヤフーがエンジン部分をグーグルに切り替えても「使い勝手は基本的に変わらない」と強調しているのは、この中間部分の多くを移植する方針だからだ。検索結果の順位も「グーグルと同じになるとは限らない」(ヤフー広報)という。これは、同じエンジンの供給を受けた自動車でもメーカーによって乗り心地や品質が異なることと似ているかもしれない。
 しかし、いくらサービスの見せ方を工夫できるとはいえ、データベース部分を自社で持たないことのリスクは残る。
 グーグルは独自の基準で検索結果から排除するサイトを決めているが、グーグルのデータベースで遮断されたページにはヤフーのユーザーも実質的にアクセスできなくなる。また、開発者の間には「検索技術を他人任せにすれば、日本が強みを持っていた情報家電や携帯電話向けなどのサービス開発がさらに停滞しかねない」との危機感も漂う。
 実際、日本の検索技術が足踏みするなかで、グーグルはテレビ番組まで検索結果として表示する「グーグルTV」構想を発表して、ソニーをパートナー企業に引き込んだ。携帯電話の世界では今年、NTTドコモの携帯サイト検索がグーグルからgooに切り替わるという逆転劇があったが、スマートフォンの台頭で携帯サイトそのものの影が薄くなりつつある。
 ただ一方で、グーグルやヤフーの検索を使わずに、必要な情報を入手する手段も増えている。最近では、関心あるテーマの最新情報をチェックするツールとしてツイッターが人気だ。飲食店情報サイトの「ぐるなび」や価格比較サイトの「価格.com」のように特定分野に強いサービスを、目的に応じて使い分けるといったスタイルも定着しつつある。
 データベース工学の専門家で検索エンジン関連の技術に詳しい東京大学生産技術研究所喜連川優教授は、「日本のヤフーとグーグルの提携はある意味で自然な流れ。競争の舞台はすでに次世代の検索技術に移っている」と語る。
大切なのは次世代検索 日本の独自技術に期待
 喜連川優・東京大学生産技術研究所教授の話 パソコンのブラウザーを対象とした従来型の検索技術の進化は行き着くところまで行き着いた。むしろ今後はソーシャルメディアツイッターのようなリアルタイム情報をどう整理して見せるかといった新たな領域での競争が重要になっている。ヤフーが検索エンジン部分を外部に任せてオークションや知恵袋といった特徴あるサービスに注力すると判断したことは自然なことだろう。
 検索市場を一社が独占してしまうことはリスクがあるが、それほど問題視すべきものでもない。次世代の検索技術は「答えが知りたい」というユーザーの欲求に応えるものになるはずで、いまの検索とはずいぶん違ったかたちになるからだ。日本でも、現実空間でのユーザーの行動を予測して最適な情報を送り届ける技術や、日本語の特性に合わせた意味解析など独自の技術が育っており、実用化に期待している。



神戸社説
「サンヨー」廃止/挑戦の遺伝子は失わずに 
 「私は大きい名前がええと思う。太平洋、大西洋、インド洋に売りまくろう。“三洋”はどうや」。三洋電機の創業者、故井植歳男氏は戦後間もない大阪で、こんなふうに新社名を決めたという。
 家庭電化時代を切り開いた伝統あるブランド「SANYO(サンヨー)」が廃止されることになった。パナソニックがグループ会社の三洋電機パナソニック電工を、2011年4月までに100%の株を持つ完全子会社にすることを決めたためだ。
 12年1月には3社間で事業を部門別に組み替える。「サンヨー」ブランドを廃止し、原則として「パナソニック」のブランドに一本化する方針だ。
 サンヨーといえば、家電ブームを巻き起こした国内初の噴流式洗濯機をはじめ、伝説となった製品がたくさんある。兵庫との関係も深い。井植氏は淡路出身で、最初の生産拠点を置いたのは加西市だ。生産や研究の拠点、関連施設も県内にそろう。
 それだけに、親しんだブランドの消滅を寂しく受け止める人は多い。しかし、グローバル競争は熾(し)烈(れつ)だ。中でも韓国勢の市場への食い込みは激しい。
 3社とも日本経済をけん引する電機企業である。とりわけ成長する太陽電池などエネルギー分野で競争を勝ち抜くには、ブランド統一で一体感を強め、選択と集中を進めることが不可欠と判断したのだろう。
 「世界の同業他社は、目標を定めると100メートル競走のスピードでチャレンジする。われわれは中距離競走の感覚だ」。パナソニックの大坪文雄社長の言葉には、経営のスピードを速めなければ敗れ去ってしまうという危機感がにじむ。
 今後、グループ内でリストラが進むのは間違いない。これまでは三洋に配慮して再編をゆっくり進める印象だったが、これからはそうはいかない。白物家電など重複する分野で、事業の統廃合は避けられない。完全子会社化によって、意思決定のスピードは格段に速まるだろう。
 ただ、いずれの企業も独自の歴史と文化を持ってやってきた。留意してほしいのは、子会社の社員の士気を下げないことだ。事業再編を進める際には、雇用の維持に最大限、配慮すべきである。
 三洋の伝統は、創業者仕込みの独創性と技術力にある。同じ関西の松下(パナソニック)には負けないという気概もあったという。そのDNAを受け継ぎ、日本のものづくりの優位性を示してもらいたい。