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閉塞感を打ち破る同人・インディゲームの可能性(COLUMN)
 9月25日の「東京ゲームショウ 2009」ビジネスデーに、今年で2回目となるイベント「センスオブワンダーナイト(SOWN)」が開催された。世界中から「何らかの驚き」を感じさせるゲームソフトを募集し、選考した10組のゲーム開発者に英語の通訳付きで、10分間のプレゼンテーションをしてもらうという趣向だ。
 昨年より広い会場を確保したにもかかわらず、海外からを含めて350人という多数が来場し、最後まで立ち見が続くほどの盛り上がりだった。
 私自身は企画者の一人として参加させてもらっている。ありがたいことに、今年も昨年と同様に世界中から60タイトル以上の応募をもらい、クオリティーがさらに上がった。最終選考に残ったのは、日本のタイトルが6本(香川県など東京以外の遠方からの参加者も含む)、海外のタイトルが4本(アメリカ2組、スウェーデン、オーストラリア)という結果になった(プレゼンテーションのすべての様子は、近く動画サイト「YouTube」にアップロードされる予定)。
 ゲーム開発の現場にいる人の意見で印象的だったのは、「(産業化している)自分たちが自由な発想をいかに制限して物事を考えているかを思い知らされた」というものだ。たしかに、登場したタイトルにはゲームの固定概念に挑むような内容のものもあった。
■「やり直し」がきかないゲーム
 傑作だったのは、スウェーデンのマーカス・リチャート氏の「You Only Live Once(あなたは一度しか生きられない)」というフラッシュゲームだ。
 サラリーマンの主人公が悪の生き物にさらわれたヒロインを救うという設定で、ゲームそのものは「スーパーマリオブラザーズ」風に横スクロールで進行する。オープニングのムービーが24カ国語対応というあたりに妙な凝り方を感じるが、体裁は普通のアクションゲームである。
 ところがこの主人公は、プレーの途中で実に簡単に穴に落ちて死んでしまう。そして、「ゲームオーバー」の表示の後、「コンティニュー」で再スタートするのだが、なんと、ゲームを最初からやり直してもう一度遊ぶことができない。
 再スタートすると、ヒロインが主人公のために救急車を呼んでいて、「もう助からない」というムービーの後、主人公の死亡を伝えるニュースの映像が流れ出す。何度もコンティニューボタンが表示されるが、そのたびに話が展開していく。そして、悪の生き物は主人公殺害の容疑で警察に逮捕される。主人公はお墓に埋葬される。以上で終わり。
 ご丁寧にこのゲームは、同じパソコン上では二度と最初からプレーできないのだという。まさに「人生はやり直しがきかない」というゲームのコンセプトを表しているのだが、会場はあまりの奇天烈さに爆笑の渦に巻き込まれた。
 こんなゲームが商用販売されることは絶対にないだろう。しかし、ゲームは必ずやり直しができるという「常識」を逆手に取ったこのゲームに、驚かされた人も多かったようだ。ゲームにはこうした表現方法もあり得るのだと。
■SOWN発の商用ゲームも
 今年プレゼンテーションが行われたゲームは、技術的にもコンセプト的にもレベルの高い作品が少なくなかった。「Hazard - The Journey Of Life」という哲学的なテーマの3Dパズルゲームをプレゼンしたオーストラリアのアレクサンダー・ブルース氏は今回SOWNに選ばれたことを、商用化の機会と捉えていた。
 独立系ゲームの開発者がこういう選考に残れば、特に海外では、メジャーな企業から注目を受ける大きなチャンスになる。交通費は自己負担であるにもかかわらず、わざわざ海外から東京ゲームショウに参加するのには、自らのキャリアを築く機会としてSOWNを利用しようという強いモチベーションがある。
 今回のために、箱一杯の名刺を用意してきたブルース氏の意気込みに、私自身も圧倒される気持ちになった。実際、選考に残ったゲームのなかから、商用ゲームとしてリリースされるものも出てくることだろう。
■日本のゲーム産業が直面する壁とは
 日本のゲーム産業が壁にぶつかっていると、このコラムで何度か書いている。しかしそれは、ゲームというメディア自体の可能性とは関わりない。むしろ、ゲームデザインには未発見の領域が多数残っているのだが、それらはビジネスに乗らないという理由で見過ごされていることが少なくない。
 日本には趣味でゲームを開発する人や、そういう人を育てるオープンな環境が不足している。日本のゲーム産業が欧米圏に比べて相対的に弱くなっている原因は、開発者のすそ野の狭さにある。アマチュアのゲーム開発者が少ないために、人材の土壌が痩せてしまっているのだ。
 私が運営に関わっているボランティア組織「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」は、今年度の主要な活動として同人ゲームやインディペンデントゲームについてのセミナーを継続的に開催している。過去、日本のゲーム産業では注目を得ることは少なかったが、この分野の研究を進めている七邊信重氏(東京工業大学特任講師)と小山友介氏(芝浦工業大学システム理工学部准教授)が世話人となって、研究会を立ち上げた。
 「アップルストア銀座」で月1回開催する「iPhone」向けゲームのセミナーを含め、今年度にすでにセミナーを6回あまり開催している。10日には、マイクロソフトの「Xbox360」向けインディゲームの開発者向け開発環境「XNA」をテーマにしたセミナーを予定しており、今年度中にまだ少なくとも5回以上は関連セミナーを開く予定だ。
■アマチュア開発者の元気に敬服
 これらのセミナーでは、今まで一般にはほとんど知られていないアマチュアセミプロの人が開発しているゲームに光を当てようと試みている。ゲームを開発したいと考えている人の敷居を下げ、参入を促す。また、すでに開発している人たちの情報交流を活発化させることを目的としている。
 アマチュアゲームからヒットに至った最近のタイトルとしては、ゲームだけでなくアニメや映画にも展開して今も高い人気を誇るアドベンチャーゲームひぐらしのなく頃に」がある。しかし、それ以外のタイトルはあまり一般に知られている状況ではない。もっと幅を広げたいのだ。
 ところが、セミナーを開催してみると驚かされるのは、同人やインディゲームの開発者の元気がいいことだ。自分が好きなものを、自分が好きなように表現する手段としてゲームを選択している。何よりも自分のゲームについて語る熱くパワーがすごい。毎回100人以上に参加してもらっているが10代の学生も多く、未来への夢を探る熱気にあふれている。
 ゲームの開発環境に限っていえば、今ほど恵まれた時代はない。パソコンが1台あれば、ちょっとしたソフトウエアを買うだけでゲームを開発するための環境は整えられる。もちろん、仕事や生活を維持しながら作り続けるのは容易でないが、それでもゲームの未発見の可能性に賭けようとする彼らのきらめきが、私にもまぶしく見える。
■「秋葉原ロケテゲームショウ1」の狙い
 10月24日には、さらにもう一歩進めて「秋葉原ロケテゲームショウ1」という実験的なイベントを、新産業文化創出研究所の協力を得て「秋葉原UDX」で開催する。何度かセミナーを開催するうちに、同人・インディゲーム開発者は自分のゲームをユーザーに評価してもらう機会が極めて限られていることがわかった。そういう場を提供できないだろうかというのが、このイベントの意図である。
 任天堂宮本茂氏は、自分の開発中のゲームを誰かが遊んでいる姿を後ろから眺めて、改善点のアイデアを蓄える。これを「肩越しの視線」と呼ぶ。SOWNはすでにハードルが高すぎる。もう少し気楽にゲームを遊んでもらってこの肩越しの視線を、同人・インディゲームの開発者に提供したい。開発途中のゲームをより洗練された内容に成長させていく楽しみを来場者と共有するのが目的だ。
 そのため、通常のイベントと違って現地での販売活動を行わず、出展のみというルールにした。「ミニミニゲームショウ」である。かなり実験的なイベントにもかかわらず、約30のサークル・個人から出展の要望があり、IGDA日本の活動に協力してもらっている多くのボランティアスタッフと準備作業を進めている。
■新しい何かの誕生に期待
 SOWNを含め、こうした作業はまだまだ小さな存在に過ぎず、実際には遠回りかもしれない。しかし、人を育てることを怠った産業が結局はダメになることは、歴史の教えるところである。アマチュアの同人・インディゲームだからといって、甘く見てはいけない。様々な人を通じて、数多くのゲームの可能性を探る冒険が行われてこそ、まったく新しいゲームが創造される土壌が育つ。彼らの中から将来の傑作ゲームが生まれる可能性は十分にある。
 「最近は日本のゲームから以前のような新しいアイデアが出てこなくなっている」という意見を、海外の開発者からも聞く。その一因は、日本の同人・インディゲームの開発者と、既存のゲーム産業が分断されているためだということを、私はこの1年で学んだ。彼らのなかにすでに国際水準で通用するレベルに達しつつある開発者がいると気づいていない人たちもいる。
 日本の同人・インディゲームの開発者を見ていると、本当の意味では日本の開発者は閉塞に陥ってなどいない。問題なのはむしろ、彼らが持つダイナミズムを受け入れる懐を日本のゲーム産業が失ってしまったことにある。
 「秋葉原ロケテゲームショウ1」は開催が初めてでもあるため、高校の文化祭を社会人がやるような手作りのイベントになるだろう。しかし、その会場で、SOWNと同じように新しいものの誕生を予感させる不思議な熱気が漂うことを期待している。



米グーグルのネット通話、米当局が調査開始 AT&T要請受け
 【シリコンバレー=田中暁人】米グーグルが展開するインターネット通話サービスを巡り、米連邦通信委員会(FCC)が調査を始めたことが9日、明らかになった。グーグルが一部回線への通話を制限していることを問題視しており、同社に質問状を送付して説明を求めた。
 調査対象になったのはグーグルが試験提供中の「グーグル・ボイス」。ネット経由で米国内で無料で電話をかけられるが、高額な通話料がかかるアダルト電話サービスなど一部の番号には通じない。
 同サービスを巡っては、通信大手のAT&Tが先月末に「通話制限を禁じる通信規制に反している」として、FCCに調査を要請していた。グーグルは「グーグル・ボイスは無償のネット機能で規制対象外」と主張している。



製造業、主要事業が黒字化 東芝半導体など
 大手製造業で赤字に陥っていた主要事業の黒字転換が相次いでいる。コスト削減に加え、新興国需要やエコポイントなどの政策効果でデジタル家電や自動車の販売が底入れ。供給量の抑制で価格が底堅く推移していることも寄与する。円高などの不透明要因もあるが、部門別営業損益の改善が続けば、回復途上にある企業業績全体の下支えとなりそうだ。
 改善が目立つのは半導体部門。東芝は携帯音楽プレーヤーやパソコンの記録媒体に使われるフラッシュメモリーが7〜9月期に黒字化、10〜12月期としていた目標を前倒しで達成したもよう。年初から6月まで30%の減産を継続。需給が引き締まり、価格が下げ止まりつつあったところに需要の回復が重なった。