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上場ベンチャーの成長を阻む3つの壁(COLUMN)
 仕事柄、数多くのベンチャー企業の経営者を見てきたが、大多数のベンチャー企業に大きな壁が存在していると感じる。東証マザーズの開設以来、あまたのベンチャーが上場し、一獲千金の夢をかなえた経営者はたくさんが、上場以降に大きく成長した企業は少数派だ。何が日本のベンチャーの壁となっているのだろうか。
■上場維持のコスト・労力は大変
 ベンチャー企業の成長過程をみると、創業期から上場までが1つのヤマ。次は上場後、株式公開で得た新たな資金を活用してさらに成長できるかどうかがもっと大きなヤマとなっている。もちろん上場までの道程は大変厳しい。東証マザーズなどの新興市場が整備される前に比べれば格段に簡単になったとはいえ、それでも上場にたどりつくためには多くの試練が待ち受けている。
 事業で利益を出すのはもちろんのこと、管理体制や株主構成まで上場企業としてふさわしい体制を整えなければならない。また将来性が描けるかどうかも大きな関門である。どんなに足元の業績がよくても、将来にわたり拡大成長していく戦略が描けていなければ投資家は反応しないし、そもそも上場が許されない。
 これらのハードルを越えて上場にたどり着いたベンチャーはやはりそれなりに評価していいだろう。新規上場によって企業は新たな資金を獲得できる。また新興市場整備のときに許された起業家へのインセンティブとして、役員は自らの持ち株も放出することができ、創業者には個人的な富も入る。
 その半面、いったん上場すると、上場維持のためのコストおよび労力は大変なものとなる。四半期決算、IR活動、コンプライアンス体制の構築など、上場企業に求められる努力と情報の開示義務は非常に厳しい。しかし、一般投資家から市場を通じて資金を集めたからには、報告の義務が発生するのは当然で、それを怠ることが許されないのは当たり前だ。
 上場維持コストやアナリストに対する説明などが大変だからといって、株価が安くなった後に創業者がMBO(経営陣が参加する企業買収)をするケースもままあるが、私には市場を馬鹿にした行為としか思えない。あるいは制度を悪用しているように思える。そうしなければならなくなったとしても、経営責任をとって創業者は身を引くべきであろう。
■上場は事業拡大のスタート台にすぎない
 そもそも上場とはゴールではなく手段である。多くの起業家が上場して個人的な富を得ることを夢見るが、上場すること自体は、企業の成長過程ではむしろスタート台に立った段階にすぎない。上場することで事業拡大のための新たな資金調達手段が増える。また会社の株(所有権)が公の市場で取引されるようになり、公器としての信頼性や社会性が高くなる。これは、さらに事業を成長させ、日本経済全体、あるいは世界経済全体への貢献が期待される段階になったということである。
 ところが、上場した後ぱっとしない会社は多い。上場した時が業績のピークでそれ以降利益率が上がらない会社。上場で得た新規資金の使途がはっきりせず、業績が伸びないのに、キャッシュに余裕のある会社。しかも経営陣はそのまま居座り、あまり危機感もない。
 何が壁となっているのだろうか。
■経営者の壁 巨万の富で生活一変
 まずいえるのは、経営者の壁である。創業から上場までの能力と、上場しさらに拡大成長させていく能力は必ずしも同じではない。会社の成長とともに経営者も成長していかなければ、会社のさらなる成長はない。
 しかし日本では上場前と上場後で経営者が変わるケースはまれである。創業者がそのまま社長を務めていくケースがほとんど。そして業績が立ちゆかなくなってから株主に交代を迫られるケースも多い。もちろん、会社の成長とともに成長していく起業家もいるが、残念ながらマジョリティーとはいえない。
 そもそも日本の新興市場は創業者に甘すぎる、あるいは甘すぎたように思える。上場はあくまでもスタート地点のはずなのに、上場時に持ち株を放出して個人的に巨額の富を得るというのは、なにかおかしい。むしろロックアップして、役員は上場後ある一定期間を経ないと売れないようにすべきではないか。意味合いは違うが、東証の場合、上場の直前に増資を引き受けた株主は原則として上場後6カ月間は市場で株を売却できない。
 上場時に富を得た起業家のなかには、生活を一変させ、まるで大変な実績を作った実業家のように振る舞う人がいる。たしかに個人として数億円から数十億円の現金を手にするわけだから、生活は一変するだろう。しかし、事業家としては、そして会社としては大きな実績を残したわけではない。これから大きな実績を作るために上場したはずである。つまり個人の資産のレベルと、成し遂げたこと、会社の成長段階とのミスマッチが起こりやすい。
 だから、個人的な富を得た段階でそれ以前のようにがむしゃらに働かなくなる人が後を絶たない。もちろん、そこを認識し、己を律し、奢(おご)ることなく引き続き努力している起業家もたくさんいるが、そうでない人が生まれやすいのである。
■人材の壁 管理者採用は難しくなる
 次に人材の壁である。普通に考えると、社会的な重みの増した上場後のほうが優秀な人材が採れそうだ。確かに新卒や若い社員であればそうであろう。しかし、マネジメントレベルの採用となると話は違う。むしろ上場直後のほうが優秀な人材は採りにくい。なぜなら、上場してしまった後に、その会社に経営陣として参画しても個人としてのインセンティブが大きくないからだ。
 上場してしまうと株価は市場で決まるので、ストックオプションをもらったとしても、その魅力は上場前から参画している役員とは比較にならないほど小さい。一方で、上場後は投資家が人件費や役員報酬に目を光らせているので、特別に高い報酬をもらうことも現実的ではない。したがって、会社のステージは明らかに変わっているにもかかわらず、経営陣は上場前のまま、報酬水準も上場前のまま、なんら変わらぬ経営体制という会社がほとんどである。つまり創業者インセンティブと後継者インセンティブのギャップが大きすぎるのである。
 米国の経営者が受け取る法外な報酬がよく話題になるが、これは会社をより大きく成長させていくプロの経営者にインセンティブを与えようとするものだ。さすがに米国は行き過ぎとは思うが、日本の成長企業は大企業、中小企業に関わらず、経営者へのインセンティブについて考えるべきであろう。
■投資家の壁 目利きができずベンチャーを甘やかす
  そして最後に投資家の壁である。このような成長企業の株を買う投資家の側にも壁がある。まず機関投資家の側で、経営の経験を持っている人が少ない。人材のほとんどが証券会社や金融機関出身の方々だ。もちろん、ベンチャーキャピタルやファンドを立ち上げるには金融のノウハウも必要だが、それ以上に、実業に目利きができる人材も必要であろう。
 欧米では、経営の側と投資側を人材が行ったり来たりするケースが一般的だが、日本では「分業」されていることが多い。結果として起業家に、そして上場している会社に甘い目利きになっているケースがないとはいえない。
 また、特に情報量が圧倒的に少ない個人投資家が、ベンチャー企業の株式を購入するケースも多い。そもそも日本の場合、欧米に比べ株式の流通量が少ない銘柄が多く、一部の投資家の行動で株価が決まってしまうこともある。そして特にIT系のベンチャーに投資する人の多くは個人金融資産が偏在している高齢者層である。この世代のなかには、事業の内容もわからず投資する人、株主総会で的外れな文句を言う人など、投資家としてのレベルが必ずしも高くない人が多い。
 ライブドア(現LDH)の株主のほとんどが個人投資家だったというのは有名な話だが、甘い投資家が甘いベンチャー企業を育ててしまうということも考えるべきであろう。機関投資家個人投資家も、少なくとも自分が理解できない事業を行っている会社に投資するのはやめたほうがいいと思う。
 日本がさらに成長していくためには、ベンチャー企業が次々と生まれることだけでなく、大きく大きく育っていくことが必須である。株式市場が厳しい環境下である今こそ、経営者も投資家も、本来のベンチャーの役割、新興市場の役割を認識し、良識ある行動をとるいい機会なのではないだろうか。



【産経主張】対中国公約 国益守る防衛力か直視を
 中国の軍事的膨張は日本の安全保障にとって重大な脅威になりうる。にもかかわらず、政権を争う自民・公明、民主など各陣営とも公約でその対応を踏み込んで論じていない。非常に残念だ。
 中国が発表した2009年度の国防予算は、日本円換算で前年度比15・3%増の約7兆930億円と21年連続の2ケタの伸びを達成した。しかも、公表値には外国からの武器購入費や研究開発費は含まれないという。
 これに対し、日本の防衛費は02(平成14)年度をピークに7年連続で減少し続け、09年度予算は約4兆7028億円だ。軍事バランスが崩れつつあるのが現実だ。
 中国の軍事増強の目的は自国領土・領海の防衛や台湾独立の阻止にある。加えて、経済成長を支える資源確保もにじむ。それにしても、最近の日本近海における中国海軍の動向には懸念を抱かざるをえない。
 今年の防衛白書によれば、昨年10月、中国海軍駆逐艦4隻が津軽海峡を通過して太平洋を南下し、沖縄本島宮古島の間を抜けて中国に帰還した。同11月には逆ルートで太平洋へ出ている。これまで保たれていた日本近海における安保面での日米優位に挑戦する威嚇行動とも受け取れる。
 軍事力を背景にした中国の海洋戦略は日本の国益を脅かしかねない。端的な例が昨年6月、日中両国政府が合意した東シナ海のガス田開発だ。
 中国政府は3つのガス田について「中国の排他的経済水域にあり、採掘権がある」と主張する。日本政府は「海域は排他的経済水域日中中間線にあたり、中国の一方的な採掘では日本側の資源まで吸い上げられる」とし、現実には折り合いがついていない。
 昨年12月には、中国の海洋調査船2隻が尖閣諸島沖の日本領海内に侵入した。海洋権益を獲得・維持する能力を誇示したい中国側の意思表明といえる。
 こうした現実に目を向けるとき、民主党小沢一郎前代表が06、07年と続けて訪中し、親中姿勢を示しているのが気がかりだ。日中間の懸案の「建設的な話し合いによる解決」(同党政策集)をうたうだけでは心もとない。
 年末に予定される防衛計画大綱の改定に中国の脅威を念頭においた防衛力整備をどう盛り込むか。民主党などが言及している防衛費削減では国はもたない。