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モバイルWiMAXサービスは“買い”か?(COLUMN)
 いよいよモバイルWiMAXの実サービスが始まる。UQコミュニケーションズは、モバイルWiMAXを使ったデータ通信サービス「UQ WiMAX」の試験サービスを2009年2月26日に開始。7月1日からは本サービスに移行する予定だ。モバイル向けのデータ通信サービスはイー・モバイルなども提供しているが、この新しい通信方式を使ったサービスは、はたして“買い”なのだろうか。
 ここでは、「通信速度」「サービス・エリア」「料金」「使い勝手」の4点に分けて考えてみる。
通信速度は現行の携帯データ通信サービスの5倍
 まずは通信速度だ。UQコミュニケーションズは、下り最大40Mビット/秒のデータ通信サービスを提供する。一方、イー・モバイルNTTドコモが提供しているHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)方式の携帯データ通信サービスは、下り最大7.2Mビット/秒だ。最大速度で比較すると、5倍以上の速さである。
 もっともこれらは理論値であり、実際はここまでの速度が出ないことは周知の通りだ。では実効速度はどれぐらいなのか。
 UQコミュニケーションズはUQ WiMAXの記者発表の席で、実機によるデモンストレーションを実施した。このデモによると、実効速度は下り約16Mビット/秒。まだ他のユーザーが誰も使っていない状態で、なおかつサービス開始発表会という同社にとって「晴れの舞台」で見せた速度だけに、この16Mビット/秒が事実上の最大速度と考られる。実効速度は電波環境によって大きく異なるため一概には言えないが、最大が16Mビット/秒とすると、まあまあ電波状況の良い場所では数Mビット/秒の後半から10Mビット/秒ぐらいは期待できそうだ。
 これに対してHSDPAの実効速度はどうか。これまた電波環境によって変わるため難しいが、だいたい1〜2Mビット/秒程度と言われている。実効速度で見ても、やはりモバイルWiMAXはHSDPAの5倍ぐらいある。通信速度は「速ければ速いほどいい」というわけではないものの、1〜2Mビット/秒が10Mビット/秒にアップするとソフトウエアのダウンロード時などは明らかに速さを実感できる。通信速度の面から言えば、モバイルWiMAXは非常に魅力的だ。
 もっとも、この「モバイル速度キング」の座も“三日天下”に終わる可能性が高い。というのも、2010年には、NTTドコモがさらに高速なLTE(Long Term Evolution)方式のデータ通信サービスを始める意向を見せているからだ。LTEの仕様上の最大速度は、なんと下り326.4Mビット/秒(ちなみにモバイルWiMAXの仕様上の最大速度は下り75Mビット/秒)。ドコモも開始当初からここまでの高速サービスは提供しない見込みだが、それでも数十Mビット/秒は期待できそうだ。
エリア自体の狭さより屋内への電波到達に不安
 次にサービス・エリアを見てみよう。UQコミュニケーションズは、2月からの試験サービスを東京23区および神奈川県横浜市川崎市で展開する。本サービス移行時の7月には、名古屋、大阪、京都、神戸にもエリアを広げる予定だ。その後、2009年度末には全国政令指定都市などへ、2010年度末には全国主要都市へと拡大する計画を持つ。
 始まったばかりのサービスのエリアが狭いことについては、とやかく言っても始まらない。既に人口カバー率が85%を超えたイー・モバイルも、2007年3月の開業当初は、首都圏のサービス・エリアは東京23区内しかなかった。サービス・エリアは、UQコミュニケーションズに粛々と広げていってもらうしかないだろう。
 ただモバイルWiMAXについては、エリア内でも屋内などでの利用に不安が残る。UQ WiMAXが利用する2.5GHz帯の電波は、既存の携帯電話に比べて周波数帯が高いため直進性が強く、窓際はともかく室内の奥深くまでは電波が届きにくい。オフィスビルの中では使えない、あるいは使えたとしても実効速度が大幅に低下するなどの懸念がある。
 NTTドコモ第3世代携帯電話「FOMA」を開始した当初、従来の第2世代携帯電話「mova」に比べて、屋内で電波が届きにくいといったユーザーの声が高まった。movaの800MHz帯に対して、FOMAが2GHz帯という高い周波数帯を使っていることが主な原因だった(現在はFOMAでも一部800MHz帯を使用している)。モバイルWiMAXの2.5GHz帯は、このFOMAの2GHz帯よりさらに高い周波数帯だ。
 屋内で使いにくいというのは、家庭内のブロードバンド回線もWiMAXに担ってもらおうと考えているユーザーにとっては気がかりだ。単身世帯のユーザーなどは、家庭用にADSL光ファイバなどのブロードバンド回線、モバイル用にHSDPAやWiMAXのモバイル・ブロードバンド回線、と二つの契約を結ぶよりも、モバイル用の回線を家庭内でも使えれば安上がりだ。特にモバイルWiMAXは実効速度で10Mビット/秒以上も期待できるため、こうしたライフスタイルが、がぜん現実味を帯びてくる。それが、いざ契約してみると「サービス・エリア内なのに家の中ではほとんど使えない」となると目も当てられない。
 ただし、これにはユーザー自らによる解決策の見通しがある。WiMAX対応のワイヤレス・ルーター(モバイル・ルーター)だ。WAN回線側にWiMAXを使い、LAN回線側に無線LANなどを使うことで、「外出先ではWiMAXアダプタをパソコンに挿し、家ではそのWiMAXアダプタを窓際に置いたワイヤレス・ルーターに挿してパソコンへは無線LANでデータを飛ばす」といったやり方でインターネット接続が可能になる。イー・モバイル対応のワイヤレス・ルーターはいくつか登場している。WiMAX対応ワイヤレス・ルーターは現時点では発売されていないものの、WiMAXの普及とともに、いずれ登場してくると見られる。
期待ほどには安くなかったWiMAXの料金
 三つ目の料金に関しては、筆者としては期待したほどには安くなかったという印象だ。UQ WiMAXの基本プラン「UQ Flat」の月額料金は完全定額の4480円。2年間の継続利用(3年目以降は1年間の継続利用)という制約があるものの、イー・モバイルが「データプラン(新にねん)」という月額4980円のサービスを既に提供しているだけに、500円差だと「たいして変わらないな」という感じがする。当初はサービス・エリアが限定されるだけに、4480円という金額では、どうしても割高に思えてしまうのだ。また、イー・モバイルの「スーパーライトデータ」のようなライト・ユーザー向けプランもない。
 もっとも、UQ Flatは契約期間の縛りがない料金プランである。将来、サービス・エリアが拡大し、「家庭でも外出先でもどこでも使える実効速度10Mビット/秒のサービスが契約期間の縛りなしで月4480円」と考えれば、リーズナブルな金額と言えるだろう。いずれ、契約期間をあらかじめ設定することで、さらに安い料金プランが登場することも十分考えられる。
 なお、UQコミュニケーションズを使ったMVNO仮想移動体通信事業者)も、料金はUQ WiMAXと大差ないと考えられる。というのも、UQコミュニケーションズのMVNO向け卸料金は、MVNOが通信設備を保有しない場合で回線当たり月額3300円(税別)。これにMVNOの取り分が加わるので、最終的なユーザー料金が4000円を下回るのは難しいと考えられるからだ。
エリアに入れば自動的にサービスにつながる
 最後の使い勝手は、実はWiMAXが携帯データ通信サービスと最も違う点ではないかと筆者は考えている。UQコミュニケーションズが提供するWiMAXサービスでは、携帯電話のようなダイヤリング操作が不要で、どちらかといえば公衆無線LANサービスの利用形態に近い。いや、使い勝手は公衆無線LANサービスより上だろう。公衆無線LANサービスのようにいちいちWebページでユーザー認証をする必要すらないのだ。サービス・エリア内に入れば自動的にインターネットにつながるといった使い勝手が実現する。
 現行の携帯電話は、SIM(Subscriber Identity Module)カードによる端末認証を採用している。一方、UQ WiMAXにはSIMカードはない。ユーザーは、最初にWiMAX経由でUQコミュニケーションズやMVNOのサイトにアクセスして、オンラインでユーザー登録する。そうすると端末に加入者情報が書き込まれ、それ以降はID/パスワードを入力しなくてもインターネットに接続できるようになる。非常にシンプルだ。
 WiMAX端末についても、当初はPCカードやUSBタイプのWiMAXアダプタを購入するしかないが、近い将来、WiMAX通信機能はノート・パソコンに搭載されてくる。そうなれば、「パソコンを買い、クレジットカード情報を入力してオンライン登録をすれば、すぐに使えるようになる」といったことも実現できるだろう。
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 駆け足でUQコミュニケーションズが始めるモバイルWiMAXサービス「UQ WiMAX」の特徴を見てきたが、では最終的にこのサービスは“買い”なのか。筆者は、十分“買う”ことを検討する価値のあるサービスと考える。
 携帯電話にLTE方式のサービスが登場すれば「モバイル速度キング」の座は明け渡すものの、実効で数M〜10Mビット/秒程度の通信速度は魅力的だ。家庭向けのブロードバンドでも、光ファイバ・サービスの登場で実効速度が数十Mビット/秒に高まったものの、だからといって、実効速度がだいたい数Mビット/秒のADSLが駆逐されたわけではない。ADSL程度で十分と考えるユーザーも実際に多い。
 そして、公衆無線LANよりも快適な使い勝手は悪くないものだ。また、現在のところ割高感が残る料金も、いずれは安い料金プランが登場する可能性も高い。
 最大のネックは、どう考えてもサービス・エリアだ。WiMAX対応ワイヤレス・ルーターがない現状では屋内利用にも不安が残る。しかしいずれエリアは広がり、WiMAX対応ワイヤレス・ルーターも発売されるだろう。UQコミュニケーションズやMVNO、通信機器メーカーの動向をじっくりウォッチしておいて、自分にとって「価値あり」と判断できた時点で導入すればよい。