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欧米市場を襲った「Wii」旋風(COLUMN)
 今年3月に米サンフランシスコで開催される「ゲーム開発者会議(GDC)」の講演予定などから世界のゲーム産業のトレンドを読み解くべく、欧米で急激に起こった市場変化と大手ソフト会社の対応について取り上げる。
 GDCは、5日間の講演数がすでに発表済みのものだけでも450に上る巨大カンファレンスだ。ありとあらゆるビデオゲームに関連する情報が集まる場でもある。ただ、今年のGDCの予定をみると、おかしなことに「Wii」と「ニンテンドーDS」についての情報がすっぽりといっていいほど抜け落ちているのに気づく。
 ゲームデザインについては合計75セッションが予定されているが、WiiとDS向けゲームのメイキングセッションはなんとゼロだ。講演も任天堂岩田聡社長が基調講演に登壇するのみで、それ以外の関連講演は予定されていない。ダウンロードコンテンツ「WiiWare」のタイトルとして欧米圏でヒットした「World of Goo」に関連するセッションなどが一部あるが、全体としては圧倒的に少ない。
 このことがまさに、過去1年間の市場の変化がいかに劇的であったかを端的に示している。WiiとDSは今や、世界の市場の鍵を握る存在に躍り出たが、その躍進のスピードは講演予定を組むのが追いつかないほどに速かったといえるのだ。
■北米市場をひっくり返してしまった任天堂
 2008年の年末商戦は、北米の販売本数が15%増え、欧州もエレクトロニックアーツ(EA)の推計によると10%増となったという。販売金額も過去最高で不況の影響は少なく、欧米市場は繁栄を謳歌したようにみえる。
 ところが、そうした雰囲気はEAなどのゲーム大手が次々と発表した大規模リストラのために、吹き飛んでしまった。EAは08年12月に全従業員の11%に当たる1100人の人員削減と、それに伴う12の開発スタジオの閉鎖を発表、この人件費だけで年間1億2000万ドルのコストを削減するという。
 3日に発表されたEAの08年10―12月期決算は、売上高が16億5000万ドルと前年同期比で10%増加したにも関わらず、最終損益は6億4100万ドルの巨額赤字となった。この急激な業績悪化をもたらした大きな要因がWiiだ。Wiiが市場をひっくり返し、その急速な変化にEAが対応しきれなかったのである。
 欧米のゲームメディアが日本を指して「任天堂独占市場」などと揶揄することが08年にはたびたびあった。ところが、08年末を過ぎると、欧米市場でも任天堂の圧倒的な強さが繰り返し言及されるようになった。それもそのはずである。Wiiが08年末に記録的な結果を残したのだ。
 調査会社の米NPDが発表した08年の米国の年間販売ランキングトップ10では、なんと5タイトルがWiiとDS向けだった。同じNPDの調査によると、Wiiの米国での08年12月の販売台数は215万台で、前年同月比59.3%増と大きく伸ばした。マイクロソフトの「Xbox360」も昨年並みの144万台売れているが、一気に差を付けた格好になった。07年末はWiiの品切れ状態が続いたため、ここまでの大きな差はつかなかったが、08年末は供給が十分であった。

販売本数

1はじめてのWiiWii任天堂528万本

2マリオカートWiiWii任天堂500万本

3Wii FitWii任天堂453万本

4大乱闘スマッシュブラザーズXWii任天堂417万本

5グランドセフトオートIVXbox360テイクツー329万本

6Call of Duty: World at WarXbox360アクティビジョン275万本

7Gears of War 2Xbox360マイクロソフト231万本

8グランドセフトオートIVPS3テイクツー189万本

9Madden NFL 09Xbox360EA187万本

10マリオカートDSDS任天堂165万本
※NPD調べ

 ハードと一緒に任天堂製のタイトルが売れるという、日本で起きたのと同じ好循環も生じている。任天堂のWii向けソフトの北米での販売本数は、08年10―12月期で前年同期比73%増の4741万本だった。欧州でも同様の伸びを示している。
 つまり、欧米市場の拡大のほとんどを任天堂単独で牽引し、任天堂のハードとソフトがそれだけ売れたのである。

ハード名販売台数

ニンテンドーDS304万台

Wii215万台

Xbox360144万台

PS372.6万台

PSP102万台

PS241万台
※NPD調べ

■100億円の大作が「はじめてのWii」に敵わず
 一方で、他のソフト会社は苦しい立場に追い込まれた。特に、「プレイステーション3(PS3)」とXbox360向けの開発コストのかかる大型タイトルは苦しい。そのコストに対して、販売本数が伴わない市場環境がやってきたからだ。
 08年は、ゲーム産業における開発費の上限が見えてきた年でもあった。100億円の開発費と言われる「グランドセフトオート4」(テイクツー)が北米でPS3とXbox360向けの合計で518万本を販売するという結果を残したが、終わってみれば「はじめてのWii」(任天堂)の528万本に負けている。
 開発費が10億円以下のタイトルと、今までのゲームの中でも最高額と言える開発コストをかけたタイトルの販売本数が同じ。これほど効率の悪いことはない。そして、販売本数ランキング上位の常連であったEAのタイトルは、「Madden NFL 09」が9位に入っているだけだ。
 EAは08年10―12月期の決算発表時に、新規タイトルとして投入したホラーアクションゲーム「Dead Space」(PS3、Xbox360、日本未発売)や、建物をジャンプするという新しいコンセプトの「ミラーズエッジ」(PS3、Xbox360)の販売が世界全体で100万本を超えたことを明らかにした。
 ただ、20億〜30億円の開発費が基本になっているPS3、Xbox360向けタイトルは、その本数ではコスト回収できていないと予想される。EAは「これらの続編では、初期の研究開発コストを下げることができ、販売本数も伸びやすい」と今後収益に貢献するとの見通しを示すが、額面通りには受け取れない。
■Wiiシフトを鮮明にしたEA
 この新たな市場環境のなか、今後の戦略としてEAが強調しているのは、Wiiへのシフトだ。
 EAのジョン・リッチティエロCEOは「Wiiは1年前よりもさらに重要になっている。販売ランキング上位に入るように、もっとシフトを進める必要がある」と述べている。09年度は、Wii向けタイトルで大きな宣伝キャンペーンを行う予定だという。
 EAの大規模なリストラは、欧米のゲーム産業全体に大きなショックを与えた。EAのエリック・ブラウンCFOは、「コスト構造をリセットした」と説明する。リストラはコストの高い地位にいる人物を主に対象にし、「年間で人件費を4分の3に圧縮できる」としている。
 EAは、プログラマー職の年棒が1000万円程度という北米の人件費相場の高さに苦しんでおり、米国外へのアウトソーシングを進めてコストを圧縮する戦略を採っていた。しかし、収益悪化でさらに大規模な基本戦略の組み替えを行う必要に迫られたと言える。
 逆にいうと、高度な技術があっても収益を生み出せることにはならないと、EAのトップが結論を出したことがわかる。それは、任天堂が新しく作り出した市場が、Xbox360やPS3といったハイエンド機と共存するにとどまらず、それ以上の存在になったことを示している。その影響力は、拡大を続けていた欧米企業の足元をすくうほどなのである。
 EAの最大のライバルでもある米アクティビジョンリザードは、北米で約85万本を売ったWii版「ギターヒーロー ワールドツアー」があったために、Wii市場でまったく売るものがないという状況を避けることができた。ギターヒーローは過去「プレイステーション2」版が最も売れていたシリーズであり、その層のユーザーがWiiへと移行を始めていることもわかる。
 09年は、より低コストで開発が可能なWiiやDS向けタイトルへ、欧米のソフト会社全体がシフトしていくのではないかと思っている。欧米の開発者は、性能の低いそれらのハードの開発を嫌う傾向があるが、そうも言えない状況が生まれつつある。
■「軽いゲーム」が新しいトレンドに
 GDCの基調講演で、任天堂の岩田社長は欧米での発売時期が明らかにされていない「ニンテンドーDSi」について言及するのではないかと予想される。DSiは、欧米でもヒットを計算しやすく、任天堂の優位性はますます高まるだろう。
 同じように、GDCでも今年は、手軽に楽しめる「カジュアルゲーム」といわれる分野が参加者の関心を引き寄せると思われる。「iPhone」向けゲームや、ダウンロード型のゲーム、アドビの「フラッシュ」で開発されたゲームは、WiiやDSへの展開が技術的には可能だからだ。GDCは比較的ハイエンドなハードに関連する情報が好まれるのだが、低い開発コストでありながら市場ポテンシャルの高いゲームを探る競争がこれからは盛んになりそうだ。
 筆者は、今後数年間は、ゲーム機の最先端をめざす技術競争の速度が鈍り、PS3もXbox360もハードとしての寿命がこれまでの5〜6年よりも延びる可能性が高くなりつつあると見ている。数年前にはまったく予想できなかった状況だが、欧米でも多くの企業が今の時代での勝ちパターンを見つけられていない。



米景気法案成立へ 経済再生、まずは一歩
 【ワシントン=大隅隆】米オバマ政権が公約に掲げてきた景気対策法が成立する見通しとなった。昨秋の金融危機で底割れした「米経済反転への長く困難な道のり」(オバマ大統領)の最初の一歩となる。だが家計のバランスシート(貸借対照表)調整はまだ始まったばかりで、消費抑制による需要不足は今後も続く公算が大きい。オバマ政権の経済政策は綱渡りを強いられる。
 対策の規模はオバマ大統領が当初打ち出した7750億ドルとほぼ同額に落ち着いた。米政府は、米国の実質国内総生産(GDP)を3%以上押し上げる効果を期待している。



G7開幕、雇用創出へ財政前倒し出動 声明原案
 【ローマ=米山雄介】日米欧の主要7カ国(G7財務相中央銀行総裁会議が13日夜(日本時間14日未明)、ローマで開幕した。同日判明した声明原案によると、各国は「成長と雇用の維持、金融部門の強化へあらゆる政策手段で協働する」ことで一致。内需拡大や雇用創出へ財政出動を前倒しして迅速に実施することで合意する。米国では上下両院が同日、72兆円規模の景気対策法案を可決し、法案は近く成立する見通し。日本も景気対策のスピードが問われそうだ。
 金融危機が世界的な実体経済の悪化へと広がる中で、G7会議は13日夜の夕食会で開幕。日本からは中川昭一財務相と日銀の白川方明総裁が出席し、14日午後(日本時間同日夜)に共同声明を採択して閉幕する。



米地銀、09年に入って13行が破綻 08年のペース上回る
 米連邦預金保険公社(FDIC)は13日、ピナクル・バンク(オレゴン州)など計4行が破綻したと発表した。4行の預金は、それぞれ地域の地銀が引き継ぐ。今年に入って地銀の破綻は計13行になり、昨年の25行の過半に達した。